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「白川総裁からのメッセージ」


 15日の日銀金融政策決定会合後の白川総裁の会見の内容が日銀のホームページにアップされている。この中から、気になるところをピックアップしてみたい。

 まずはスタグフレーションの局面に入ったのかとの質問に対しては、総裁は入ったとは判断していないとしているが、こうした見通しには不確実性が大きい点もコメントしている。

 また、原油価格の先行き見通しについて、総裁は予想を述べることは適当ではなくあまり意味もない点を指摘している。相場の決定要因は複雑に絡み合い先行きの的確な予想は困難に近い。ただ原油需要に支えられ国際商品市況は先行きも高水準で推移すると想定していることも示している。また原油価格に関しては「敢えて強いポジションは取らずに、現在の高い水準で推移するということでまずシナリオを立ててみるということが、責任ある当局としての予測の立て方だと思います。」とも指摘している。

 景気について足許はさらに減速をし、暫くこの局面が続くが、その後は徐々に緩やかな成長経路に復していくという判断。一方、物価については先行き上がっていくが、その後はまた低下していくというシナリオからは、現在ここで金利水準を調整する必要はないとの判断を示した。

 先行き物価に関しては「足許エネルギー価格、原材料価格が上がってきていますので、この先、消費者物価上昇率は暫く上がっていくとみています」との発言もあった。ただし、「セカンド・ラウンド・エフェクト(二次的効果)、つまり輸入コストの上昇により物価が上がった結果、先々の予想インフレ率も上がり、それが賃金の設定を始めとした色々な賃金・物価形成に組み込まれていき、さらに物価が上がっていくという効果が起きているかというと、現在のところそうしたものは起きていないように見えます。」とも指摘している。このため「セカンド・ラウンド・エフェクトがこの先起きてこないかどうかは丹念にみていく必要があると思っています。現在は起きていないということですので金融政策で対応しなければならないということではないと思っています。」としている。このため物価上昇を意識しての利上げといったものも現状は考えづらいとも言える。

 ただし、「インフレ・リスクについて言いますと、中央銀行は決してインフレのリスクに対して鈍感ではなく、先ほど申し上げたような意味において十分注意深くみている、という情報は常に発信していく必要があると考えています。」とも指摘しインフレ・リスクを全く無視しているわけではない点も指摘している。

 そして、足許景気がさらに減速していることの一番大きな原因として、交易条件の更なる悪化を示し、その結果、設備投資にも影響が出て、短観などから中小企業あるいは非製造業に設備投資の増勢鈍化の傾向がより明確に出てきている点を示している。また個人消費の伸び鈍化の要因については、雇用者所得の伸びと交易条件の悪化による購買力の低下という2つの要因を指摘した。

 また設備投資に関して、1~3月が前期比小幅のマイナス、4~6月は6月の予測計数を前提にするとやはり小幅のマイナスと減少基調との点も言及。「こうした動きは、今回景気が更に減速しているということを裏付けるひとつの材料として認識しています。」としている。

 物価上昇と景気減速のリスクに対して、白川総裁はバランスを取れた発言をしてするようにも思えるが、現在の物価上昇がインフレを招くものといった印象ではなく、景気減速に関しては設備投資などの増勢鈍化などもあってより警戒心を強めているようにも伺えることで、やや景気に対して軸足を置いているようにも思われる。

そして、各国中銀との政策協調に対して総裁は次のように発言している。

 「政策協調についてですが、各国が政策金利を同じ方向に動かすという意味での政策協調は、これまで各国がやってきたわけではありませんし、またそうした政策が望ましいとも思いません。かつてプラザ合意の後にいわゆる政策協調という議論が盛んな時期があったことは事実です。しかし、現在は中央銀行間および学界においても、いわゆる政策協調は望ましくないというのが、どちらかというと多数説だと思います。これは、金利を一斉に各国が調整するという意味での政策協調を否定する議論ではありますが、各国が意思疎通を図るということの重要性を否定するものではありません。十分に意思疎通を図っていくということは非常に大事であり、そういう意味で協調という言葉を使うとすれば、協調は格段に強化されているというのが私の実感です。」

 いまだに協調利上げや協調利下げといった思惑が市場で出ることがあるが、すでにそういった見方が時代錯誤的なものであるのは、この白川総裁の発言からも確かなものであろう。
by nihonkokusai | 2008-07-17 10:13 | 日銀
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