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「長期金利1.8%台上昇の要因」


 29日17時過ぎに10年292回国債の利回りは1.8%台に乗せ1.805%をつけた。長期金利の1.8%台乗せは昨年8月以来、米国のサブプライム問題が深刻化する前の水準となる。ここにきての日本の長期金利上昇の背景の要因のひとつは欧米の長期金利の上昇がある。米サブプライム問題による金融市場の混乱が、ベア・スターンズの救済などをきっかけに沈静化した。米経済への影響といった懸念も残るものの、ここにきての米経済指標も思いのほかしっかりしているものも多く、たとえば29日に発表された米1~3月期GDP改定値は前期比年率+0.9%と市場予想通りの数値ながらも速報値から上方修正された。

 このように米経済に対しての過度の悲観論も後退してきている。米FRBは利下げ休止かとの見方も強まり、今度はよりインフレへの警戒姿勢も示している。29日にダラス連銀のフィッシャー総裁は、インフレ期待の悪化が続くなら、金融政策の転換が訪れるだろうと発言していた。こういった情勢下、米10年債利回りは4%台に乗せ今年1月2日以来の水準に利回りが上昇してきた。また欧州市場でも29日にドイツの連邦債10年物利回りは 4.483%と昨年7月以来の水準に上昇している。

 米サブプライム問題の落ち着き、さらに世界的なインフレ懸念の強まりなどから欧米の長期金利も上昇していることに加え、さらに国内では、市場参加者のリスク許容度の低下などもあり、積極的な買い手が見当たらない。国内投資家も超長期ゾーンなど長い期間の債券を買って、中長期ゾーンを売るなど入れ替えといった動きが主体とみられることで、特に中長期には売り圧力もかかりやすい。

 さらに債券先物にはこちらも参加者が限られた中にあって、ここにきて再びCTAといった仕掛け的な動きも活発化し、株式市場が先物主導で上昇した反面、債券相場はこういった仕掛けて的動き、特に売り仕掛けによって下落ピッチが加速される面もあり、これも債券相場の下落要因のひとつとなっている。

 日銀による年内利上げの可能性は現在のところは予想しにくい。白川日銀総裁も会見などおいて日本経済の見通しについてはかなり慎重な見方をしていることからもそれが伺える。

 そうは言うものの、今年3月には10年債利回りで1.215%、5年債利回りで0.7%、2年債利回りで0.505%と、日銀の利下げを織り込むような水準にまで利回りが低下してしまったことが、やや行き過ぎの感もあり、その反動もあってここにきてのピッチの早い利回り上昇となったとみられる。市場参加者のリスク許容度の低下要因もこういった相場変動がひとつの背景にあるとみられる。

 それでは1.8%つけたあとの長期金利はどうなるのであろうか。米経済の減速がそれほどでなく日本経済についても日銀の展望レポートの予想のように1.5%~1.7%あたりの潜在成長率近辺となり、物価の上昇についても中長期的な物価安定の目安となる1%近辺(展望レポートでの委員毎の中心値)となるならば、長期金利の1.8%というのも決してそれほど高い水準ともいえない。

 しかし、ややピッチの早い長期金利の上昇でもあっただけに、そういった動きが落ち着けばさすがに投資家の押し目買いも入ってくるとみられる。1.8%は通過点となる可能性はあるが、やはり2%は大きな心理的な壁ともなっているだけに、ここからの長期金利の上昇も次第に慎重なものとなるのではないかと思われる。
by nihonkokusai | 2008-05-30 09:19 | 債券市場
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