「もうはまだなり」
再び5月20日の白川日銀総裁の会見から見てみたい。
白川総裁はエネルギー価格、原材料価格など「商品市況の想定について、これまでずっと予想が外れてきています。」と正直に認めている。
そして『これは日本銀行に限らず、多くのエコノミストが、「ここまで上がってきているから、さすがにここが天井で先行きは下がる」といった見通しが、繰り返し裏切られてきました。』
これは相場格言で言うところの「もうはまだなり、まだはもうなり」であろう。これは解説するまでもないが、もうそろそろ天井だろうと皆が思っていときほどさらに価格は上昇するが、それが繰り返されることによって、まだまだ上昇すると皆が思い始めたときに天井を打つことを示している。
これは過去の相場にも良く見られたことである。1989年末バブル期最終局面の日経平均株価に対してまだまだ5万円までいくといった予想があちこちでみられ、市場参加者がまさにバブルに酔いしれたときこそ、日経平均は天井を打ってバブル崩壊に繋がった。
今回の原油先物についてどこまで上昇するのかは予想は難しい。ただし、こういった加熱局面であらためて200ドルといった予想が出ており、市場参加者もそれはありうると認識してきたならば、そろそろ最終局面を迎えてきたとしてもおかしくはない。こういった相場に対してはどの水準が適正なのかというよりも、いつまで続くのかが問題となるのではなかろうか。
白川総裁は商品市況の先行きをどうみるかということについては、「ここは、明らかに上だとか下だとか言わずに、注意深くみていくとしか言いようがないと思います。」
日銀は直接相場に関わっているのではなく、その影響の度合いを見極める必要があることで、特にこういった投機的な動きを示しているものに対しては、予想を立てることも重要ながらも、むしろ動きをしっかり見守る姿勢が大切かと思われる。