「長期金利が予想配当利回りを上回る」
16日の10年債利回りは1.695%となり、東京証券取引所に上場する全銘柄の予想配当利回り1.68%を上回った。長期金利が予想配当利回りを上回ったのは2007年12月27日以来となる。ちなみに予想配当利回とは予想配当金を株価で割って計算したものであるが、株価の上昇によって予想配当利回りが低下するとともに、債券相場の下落による長期金利の上昇によって、長期金利が予想配当利回りを上回った。
昨年からの長期金利と株式の配当利回りの「逆転」現象が起こった原因は、米サブプライムローン問題による金融収縮の広がりへの懸念や、米経済への減速観測といったものによる。これにより米国株式市場が下落しその影響を受けて東京株式市場も大きく下げた。安全資産として米国債に買いが入り、日本の債券市場でも国債主体に買われ2008年3月には長期金利は1.215%まで低下した。
しかし、米大手証券のベア・スターンズ救済策の発表などをきっかけに、米金融市場も落ち着きを取り戻し、米経済についても過度の悲観論が後退した。このため米株式市場は切り返し、米債は反落。日経平均も2008年3月の11787円を安値に14000円台を回復。長期金利も5月に入り一時 1.7%台まで回復した。
長期金利は株式の予想配当利回りだけで形成されるわけではないが、長期金利が予想配当利回りを上回ったことで、長期金利上昇は目先一服してくる可能性もありそうである。少なくとも異常な状態が解消され、徐々に平時に戻りつつあることをこれは示しているとも思われる。