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「中立性を強調した白川総裁」


 5月12日の日本記者クラブにおける白川日銀総裁の講演において、金融政策の方向性については中立性を意識した発言が目立っていた。ただし、福井総裁から白川総裁にバトンタッチ後、日銀の金融政策の方向性について大きく舵を切ったとの見方もあるが、その基本姿勢には大きな変化はないことが次ぎの発言からも明らかとなっている。

 「やや大きな構図で捉えた場合、現在、実質短期金利がゼロ%近傍と、極めて低い水準にあるということは、中央銀行として、当然、留意しておかなければなりません。したがって、日本経済が物価安定のもとで持続的な成長軌道を辿るという見通しに対する確度が高いのであれば、金利水準は調整していくことになると思います。」

 そうは言うものの、現在は景気の下振れリスクに注意を払っている姿勢を示し、「経済の先行きには常に不確実性がありますので、金融政策運営においては、ひとつの見通しだけに依拠するのではなく、見通しに対するリスク要因を十分に考慮する必要があります。」としている。

 さらに「リスクのバランスに偏りがあり、特に、海外経済や国際金融資本市場を巡る不確実性、エネルギー・原材料価格高の影響など、景気の下振れリスクに注意しながら政策運営を行うことが必要な局面にあると考えています。」

 上記の考え方により、現状の金融政策は上下両方向のリスク要因を丹念に点検しながら、それらに応じて機動的に金融政策運営を行っていく姿勢を示した。

 しかし、白川総裁は次のような発言もしている。

 「政策当局者も含め、現状を将来に投影するというのは人間の本性であることも十分自覚する必要があります。冷静に考えると、これまで述べてきたような世界経済や日本経済を覆う霧が薄れてくる場合には、上振れ方向のリスクの重要性が増してくることも意識しておく必要があります。」

 「現状を将来に投影するというのは人間の本性」との発言はなかなか奥深い。的確に未来を見通せない以上は現状を元に未来を判断するほかないが、悲観的な見方が強い中にあっても、上振れ方向のリスクも意識する必要性を説いている。

 「家計や企業は、当面は景気下振れのリスクの方を意識していると思われますが、やや長い目でみた経済の成長期待は維持されているように思われます。そうだとすると、景気下振れリスクが顕現化せず、不確実性が小さくなっていけば、企業や家計の成長期待が上振れる可能性もあると考えています。」

 白川総裁が果たして本当は先行きに対して個人的にどのような予測をしているのか。この講演でも中立性を意識した発言も多かったが「日本経済を覆う霧が薄れてくる場合」もそれなりに意識しているようにも思われるのである。
by nihonkokusai | 2008-05-13 09:24 | 日銀
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