「福井日銀総裁の姿勢は変わらず」
経済・物価の現状と先行きについては、これまでの見方に変化はなく、注目すべきは米国のサブプライム関連の問題に関しての発言となる。
「米国では、住宅投資は減少を続けており、在庫が高水準であることも踏まえますと、住宅市場の調整は当分の間、続くと考えられます。サブプライムローン問題に端を発した金融面の調整が強く意識される中で、銀行の与信態度も慎重化しています。」
「当分の間」とはどの程度の期間と想定しているのであろうか。これはたぶん福井総裁も具体的なスケジュール感は持っていないのではないかとみられる。お膝元のFRBのコーン副議長ですら「過去数週間に起きている経済状況の悪化度合いは、私見を述べれば、自分が想定していたものではない」と指摘していたぐらいである。
福井総裁は「一方、今のところ、他の部門には大きな影響は出ておらず、個人消費や設備投資は、減速しつつも緩やかな増加基調を維持しています。雇用も増加を維持しています」としており、米国経済に対してのメーンシナリオについては「目先は低成長が見込まれますが、その後、安定成長に向けて軟着陸していく可能性が高いとみています」としている。しかし、「この先、住宅市場の調整が一段と厳しいものとなった場合や金融資本市場の変動の影響が予想以上に広範なものとなった場合には、資産効果や信用収縮、企業や家計のマインド悪化などを通じて、個人消費や設備投資が下振れ、米国経済が一段と減速する可能性が考えられます」とのリスクシナリオについても述べている。
市場の一部では来年にかけての複数回のFRBの利下げ期待も出ているが、その背景には「米国経済が一段と減速する」懸念があるとみられる。しかし、米景気に関しては現時点では福井総裁のメーンシナリオをFRBなどでも抱いているとみられるが、市場ではリスクシナリオの可能性を意識しているようにも見受けられる。福井総裁は、さらに日本の金融政策に関して「2%の成長性持続のもとでインフレなければ今の日本の金利は低すぎる」と発言した。ただし、「金利引き上げは急いではいない」とも付け加えている。
「金融政策について市場予測は短期的、日銀はさらに先まで見て判断している」とも発言しており、福井総裁はサブプライム問題を引き続き懸念しているものの、市場が落ち着き、米経済の落ち込みもそれほどではないとなれば、日銀の想定どおりCPIも10月にプラスに浮上したこともあり、あらためて利上げのタイミングを模索する姿勢には変化はないものとみられる。