「7月11日~12日、金融政策決定会合議事要旨より」
本日朝8時50分に、7月11日~12日に開催された金融政策決定会合議事要旨が発表された。この中で、まず米サブプライム問題に関しては下記のような意見が出ていた。
「多くの委員は、サブプライム住宅ローンを巡る問題を含め、住宅市場の調整の帰趨には引き続き不確実性があるとの認識を示した。」
「ある委員は、住宅価格の伸びが鈍化していることによって、消費者信用の借入れがこれまでに比べて容易でなくなってきており、そのことの影響が消費行動に出ている、と述べた。」
「サブプライム住宅ローンについて、何人かの委員は、現時点で蓋然性が高い訳ではないが、仮にクレジット市場が深刻な影響を受けることになれば、わが国を含む世界の金融経済情勢に悪影響を及ぼす可能性は否定できないので、そうした観点からも引き続き注意深く事態の推移を見守る必要があると述べた。」
「これに対し、一人の委員は、住宅市場の調整は実体経済の基礎的条件に関する問題から、金融セクターの一部に限られた問題へと性格が変化しており、わが国の金融政策を考えるうえでは大きなウェイトを占めないと述べた。」
米消費行動への影響を懸念する委員と、金融セクターの一部に限られた問題と指摘する委員と見方が分かれている点も興味深い。
中間評価に関しては、下記のように展望レポートに沿った推移としている。成長率の水準は、見通しに比べて上振れて推移しているとの意見は水野委員か。
「大方の委員は、わが国の景気は、4月の展望レポートで示した見通しに概ね沿って推移していると考えられると述べた。」
「これに対して、一人の委員は、生産・所得・支出の好循環のもとで息の長い成長が続くというメカニズムに変化はないが、成長率の水準は、見通しに比べて、国内・海外要因ともに上振れて推移していると述べた。」
「景気の先行きについては、この委員を含めて、見通しに概ね沿って推移すると予想されるとの見方を共有した。」
消費者物価に対しては、次のような発言となっていたが、「付け加えた」とする委員は岩田副総裁かとみられる。
消費者物価は、2007 年度、2008 年度とも、見通しに概ね沿って推移すると予想されるとの見方を共有した。一人の委員は、4月の展望レポートにおける委員の見通しからは下振れ気味であるが、大きくは逸脱していないと評価しうる範囲内であるので、見通しに概ね沿って推移する、との表現に賛成すると付け加えた。」
そして注目の、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針については、まず下記のように水野審議委員の発言から
「一人の委員は、政策変更が可能な状況に至ったとして、無担保コールレートの誘導目標を、これまでの0.5%前後から、0.75%前後に引き上げることが適当であるとの見解を示した。」
これに対し、大方の委員は、「無担保コールレート( オーバーナイト物) を、0.5% 前後で推移するよう促す、という現在の金融市場調節方針を維持することが適当であるとの見解を示した。」
その理由としては次のような発言があった
「これらの委員は、4月の展望レポートで示した見通しに概ね沿って経済・物価情勢は推移しているが、見通しの蓋然性とそれに対するリスクをさらに見極めるため、引き続きあらゆる指標や情報を丹念に点検することが適切であると述べた。」
もう少し様子を見たいというところか。
「何人かの委員は、現時点で考えられるチェックポイントとして、例えば、米国経済の状況、IT関連財など国内生産の動向、賃金の動向、物価を巡る環境などが考えられるが、金融経済情勢は、絶えず新しい事象が生じるものであるので、何か特定の指標なり、特定の分野を念頭に置いて考えることは適当でないと述べた。」
チェックポイントを絞るのも確かに変化に対応できなくなるが、常に事象の変化を追って行過ぎるのも、決断を遅れさせてしまうのではなかろうか。
「大方の委員は、引き続き幅広い視野で見通しの蓋然性を確認し、リスク要因を点検していくということが重要であるとの意見で一致した。」
「委員は、市場や報道で、次の利上げ時期が近づいているとの見方が強まっているだけに、対外説明においては、具体的な政策変更のタイミングについて予断を与えることのないよう、金融政策運営の基本的な考え方を繰り返し説明していくとともに、経済・物価の現状と先行きに関する判断を、引き続き丁寧に説明していくことが重要であるとの認識を改めて示した。」
最後の部分は福井総裁か。7月11日から12日の決定会合での利上げ見送りの背景は、本音とすれば参院選を控えてということであったろうかと思う。このあとの金融市場の混乱が生じたことで、選挙に関わらずこのタイミングで追加利上げをするべきであったとの意見もあった。しかし物は考えようでもあり、もしここで日銀が利上げを実施していたとしたら、米サププライム問題に端を発する金融市場の動揺の犯人ともされかねなかった。結果論ではあるが、この意味では7月の追加利上げの見送りはあとを振り返ってみても、むしろ良かったのかもしれない。