「福井総裁会見」
23日に発表された8月の日銀の経済月報(基本的見解)が先月と内容がほとんど変化がなかったが、福井総裁も会見においても「日本経済は引き続き緩やかに拡大していることを確認した」と発言した。
ただし、23日の金融政策決定会合で利上げが見送られた背景としては、「金融市場においては、世界的に振れの大きい展開となっており、影響を含めて状況を注視する必要があるとの判断になった」(福井総裁)ことが大きな要因となったものとみられる。
今回のサブプライム問題に端を発する信用収縮にともなう金融市場の動向に対して、福井総裁は「今回の金融市場の新しい調整プロセスは、リスク再評価の過程と言われているが、今春や昨年5-6月の株価の調整と比較すると、クレジット市場を中心にリスク評価が甘すぎた部分が、市場の中で納得できる新しい価格発見を行なっていくプロセスという点が違う」と発言した。
「今のところリスク再評価のプロセスは起こるべくして起こっているのであり、これがオーダリーに進む限りは次の安定的な経済の発展に繋がる市場の動きと受け止められる面が多く、このプロセスを大事にしたい」と、ある意味、今回の市場の動きについては市場の浄化作用ともなっていることを指摘している。
そしてこの、リスク再評価のプロセスには時間がかかるとも総裁は指摘しているが、その時間に関しては「今、ABCPとか、CDO、CLO のマーケットが機能停止に近い状態であることを考えると、これがほぐれていくために、やはり数週間でとは、なかなか考えにくいと思う」と述べている。
ちなみに、BNPパリバは23日に、今月7日に実施した傘下の3つのファンドの凍結を28日以降、順次解除すると発表している。市場が落ち着きを取り戻し、ファンドの資産価値を適正に評価する「諸条件が整った」としているが、説明の中にはファンドの「資産価値を計算できる新しい手法」を確立したと説明もあった。
あまり楽観的な見通しもいけないかもしれないが、各国金融当局も今回の相場変動にはかなり神経を尖らせており、いろいろと対策を講じてくるともみられる。今回の金融市場の混乱を招いたひとつの要因でもあったBNPパリバのファンドの凍結解除も、そういった動きの一環ではなかろうか。不透明なものも、いったん対策が講じられるようになれば、透明度を増す時間も意外に早まる可能性がある。
福井総裁は会見では、完全にほぐれるのには数週間では難しいとしているが、実際には、ある程度のほぐれてくる目処が立つまでには、それほどの時間も必要ないかもしれない。それ以前に、移ろいやすい市場がそういったものに対してのすでに興味を失い、あらたな材料に関心が向かってくることも考えられる。
次の決定会合までには、まだ時間もある。日本のファンダメンタルに大きな変化がない限りは、9月18日から19日にかけての決定会合での利上げの可能性は十分ありうるとみている。