「買ってはいけない国債が買われる理由」
国債は、「やっぱり危ない」、「買ってはいけない」という本が売れているようである。「日本国債は危なくない」という本を出させていただいたことで対抗意識を出すわけでも、むこうの方が売れているようなので僻んでいるわけでもない(たぶん)が、現実の金融市場を見る限り、買ってはいけなく危ない国債はしっかり買われている。特にサブプライムショックに起因した「危機」に直面したマーケットの中で、「危ない」はずの国債が「質への逃避」で買われているのはなぜなのか。
これは金融市場にある程度関係している人にとっては、何を今更ではあろうけど、それでも世の中では、「やっぱり危ない」と考えている方も多い。
ということで、これはどちらかといえば金融市場関係者以外の方に読んでいただきたいのだが、国債には買われる理由がしっかり存在しており、金融のプロと呼ばれる金融関係者にとっては、決して危ないものとか買ってはいけないものでも、暴落を想定しているものではない。
金融機関にとり、ほかに買うものがないのではないかとの意見はある意味当たっている。兆円といった単位で買える金融商品は国債以外には見当たらない。とは言うものの、金融機関はしかたなく買っているわけではなく、しっかりとした運用手段として購入している。
さらに国債に対して信認が得られているという事実もある。この信認が維持されなくなれば暴落はありうる。しかし、国債暴落説が流れてから何年経過しているであろうか。その兆候は全くと言ってよいほど市場動向を見る限り、ない。
むしろ、今回の状況を見ていても、危機対応としてCPといった企業の発行する社債などから、TBつまり短期国債への資金シフトが起きるなど、金融機関がより安全性を求める際には国債を買っている事実をどのように考えれば良いのか。
それでは、金融機関は国債の危険性をまったく認識していないのか。サブプライム問題に絡んでのCDOなど複雑化した金融商品のリスクの測定が難しいように、国債という金融商品に対してのリスクも金融機関は認識していないのではないかと思っている方もいるのかもしれない。
しかし、国債の信認は発行体である国への信認そのものとなり、リスクといったものははっきりしている。特に日本では巨額の債務を抱え、それが大量の国債発行残高へと繋がっている。その国債への買い手がいなくなれば、確かに国債は危なくなり暴落もしよう。しかし、この発行残高が維持されているという事実は、とりあえず信認が維持され、買い手が存在していることにもなる。ちなみにその買い手は国内金融機関、つまりは預貯金、生損保、年金などを経由した国民である。
国民のお金を利用して国債を買い支えているシステムを国が作っているので、なんとか信認が保っているとの見方もある。しかし、現在は国債引受シンジケート団も廃止されており、金融機関の引き受けで買い支えられているわけでもない。日銀も毎月1兆2千億円の国債を市場から買っているが、これはあくまで金融調節の一環であり、日銀が国債を買い支えているわけでもない。
国債は、買ってはいけないものとか、危ないものにするのではなく、国の財政構造改革などにしっかり国民が目を配って、買っても安心なもの、危なくないものと我々がしなければならないものなのである。