「夏の光、読後感」
連休中にアマゾンから頼んでおいた「夏の光」が届いていたのだが、最近の休みの日は新しい本の原稿書きに追われており、結局読み始めたのが16日の夜から。しかし、読み始めたら止まらなくなり翌日中に読み終えてしまった。内緒だが、仕事の合間につい読んでしまったというのが実情か。言い訳ではないが、この「夏の光」登場人物の一人は債券アナリストであり、特に国債に関する記述が多い。財務省の関係者とのシーン、さらに国債市場懇談会のシーンなど結構、生々しく描かれている。また、国債発行を巡ってのやり取りなど、小説であるためフィクションも挟みながらも、なかなか真に迫ったものがあった。
さらに著者が新聞記者だけに、国債関連のことを記事にするシーンなども結構リアルである。こちらも小説だけに、中の記事の内容はあくまで架空ものであろうが、それでも文章スタイルはまさに某経済紙の文章そのままとなっている。
とにかく小説を読んで国債のことを知ろうとするならば、この「夏の光」は幸田真音さんの「日本国債」とともにお勧めである。
そして何より、小説そのものも感動的である。ここでストーリーを明かしてしまっては、最後のシーンでの感動が薄れてしまうため書かないが、ここまで劇的な過去でなくても、皆それぞれ持っているであろう学生時代の思い出が、この文章を読むだけでよみがえってくることは間違いない。
それにしても、この小説の債券アナリストにモデルがいたのであろうか、やはり気になった。そういえば、著者は最後のページで「刊行にあたり、古くからの親友Sに感謝したい」と謝辞があったのだが。なにはともあれ、関心のある方はぜひご一読いただきたい。
「夏の光」、田村優之著、ポプラ社