「イングランド銀行の独立性」
イギリスのトニー・ブレア首相は10日、6月27日に辞任すると正式に表明した。後継首相には、ゴードン・ブラウン財務相の就任が有力となっている。 1997年5月のイギリスの総選挙で労働党は18年ぶりに保守党を圧倒的多数で倒し、ブレア政権が誕生した。この際、ブラウン氏は政権の事実上ナンバー2 として財務相に就任した。ブラウン財務相は就任わずか4日目に金融政策の大転換を行った。財務省から中央銀行であるイングランド銀行に金融政策の決定権を移し、独立性を高めるという大胆な改革に踏み切ったのである。
イングランド銀行は、第二次世界大戦後に成立した労働党のアトリー政権の下で「1946年イングランド銀行法」によって国営化され、政策運営の独立性を失っていた。イングランド銀行に対する財務大臣の指示命令権を規定するなど、イングランド銀行を実質的に財務省の付属機関と位置づけていた。公定歩合政策と外国為替政策の決定権限はし実情財務大臣に属し、イングランド銀行はその執行機関としての役割を担っているにすぎなかった。
しかし、ブレア政権は内閣発足後ただちにイングランド銀行の改革に着手した。この改革の要点は、イングランド銀行総裁、副総裁、理事、外部らの委員で構成される金融政策委員会へ政策運営権限を委譲すること、外国為替市場介入権限を部分的にイングランド銀行へ委譲すること、準備預金制度の法制化、銀行監督権限をイングランド銀行から分離し新設された金融監督庁へ移管すること、そして国債管理業務の財務省への移管などであった。
金融政策に関しては、インフレーションの目標は政府が設定し、イングランド銀行はこれを達成するために必要な政策手段を決定するといった役割ともなっている。