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「3月7日の岩田日銀副総裁の会見より」


3月7日の岩田日銀副総裁の会見の要旨が日銀のホームページにアップされた。

 『仮に消費者物価指数(除く生鮮食品)がマイナスの場合でも、利上げが行われるのかということについては、2つの「柱」に基づいてしっかりと点検をしながら、その中で決定していくことになります。その中で物価の先行きがどうなるかということは、もちろん重要な点であり、十分考慮しなければならないポイントの一つだと思います。ただ短期的な物価の変動と、少し長い目でみた物価の安定は同じことではありません。私どもとしては、「中長期的な物価安定の理解」で考えているところに長い目でみた物価上昇率が上手く収まっていくかということが基本的に重要な点でないかと考えています。』

 2月の金融政策決定会合において、岩田副総裁は一人利上げに反対した。その反対理由については2月21日に福井総裁は会見で、「岩田副総裁の主張は、物価の先行き見通しの不確実性というところに他の委員と比べるとより強い力点を置いておられた」と述べていた。3月8日の岩田副総裁の講演や会見で、この物価の動向についてどのように見ているのかがひとつの注目点となっていたが、上記の岩田副総裁の発言からは、福井総裁などの考え方とはそれほど大きくは乖離していなかったことが伺われる。

 この会見においてもあらためて反対した理由を次のように岩田副総裁は発言している。

 『賃金あるいは個人消費の弱めの動きは、現在、必ずしも払拭されていない、そしてIT部門を中心に生産面で軽度の調整が起こる可能性もあるという状況のもとで、物価上昇率の先行きに不透明性が強いということが、私が反対した半分の理由です。もう半分の理由は、私どもは現時点では2007年度までしか成長率や物価の見通しを出していませんが、中長期の意味での物価安定が重要だということを考える場合、やはりそうした点も含めて展望レポートなどで丁寧に説明してからでも遅くはないのではないかという点から反対票を投じました。』

 物価上昇率の先行きに不透明性が強いということは確かであり、もう少し様子を見る必要があるという指摘もある意味適切なのかもしれない。しかし、総裁が21日の会見で示していたように「より長い目で消費者物価の動きをみると、設備や労働といった資源の稼働状況は高まっており、今後も景気拡大が続くと考えられることから、基調として上昇していくと考えられます。」との見方からの利上げについても共感しうる。

 今後はこういった反対意見があることによって、見方の違いからの意見交換を通じて、より金融政策の決定過程の透明度が増してくるとも考えられ、今回の副総裁の反対というのはそういった意味では良かったのではないかとも思う、

 岩田副総裁は『2005年8月に英国の中央銀行であるイングランド銀行ではキング総裁がむしろ少数意見になってしまいましたが、キング総裁は個人的な意見は必ずしも賛成ではないものの、当然ながら決定事項を全力を挙げて執行されたと思います。』とも発言している。反対はしたが決まったことに対しては全力を挙げてそれを執行するとの意思表明ともなり、こういったことも日銀への信認を高めるものとなるのではなかろうか。
by nihonkokusai | 2007-03-09 12:51 | 日銀
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