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「円キャリートレードの巻き戻しか」


 上海株式市場の急落などから、円キャリートレードの巻き戻しの動きが急速に強まり、欧米市場を直撃した。FTSEユーロネクスト300種平均は44.31 ポイント下落し、1月11日以来の下げとなり、NYダウは一時543ドル安となった。これを受けて質への逃避の買いが入った米債は急伸し、10年債利回りは4.51%に低下した。これを受けて債券先物も差し引き2000億円を超える買いとなり買い気配のスタートとなり135円台で寄り付いた。

 このパニックとも言える動きの、きっかけのひとつとなったのが、中国の株式市場の下落である。27日に中国での金融引き締め懸念などから、上海株が8.8%の下げとなり、1日の下げ幅としてはここ10年で最大となった。ただし、前日に上海総合株価指数が初めて3000ポイント台に乗せるなどここにきて急ピッチな上昇となっていただけに、達成感や高値警戒感といったものによる下げとの見方もできる。

 これはある意味、円キャリートレードなどによる過剰流動性が招いた結果とも言える。値動きからはバブル崩壊時の日経平均の動きにも見える。そして、タイミングから21日の日銀の利上げによる影響といった見方も出るかもしれないが、現実に利上げがあった際の為替市場はむしろ円安が進行していた。むしろこの程度の利上げでは円キャリートレードは収まることはないといった楽観的な見方が蔓延するほどにバブルに似たような感覚が蔓延していた可能性もある。

 リスクを感じさせない麻痺的な相場といったものは良く起こりうるが、これだけ大きな動きというのも久しぶりである。それだけ円キャリートレードといったものが膨れ上がっていたことを改めて思い知らされる。

 その意味では、21日の日銀の追加利上げはむしろ遅すぎたとも言えるかもしれない。もちろん円キャリートレードや過剰流動性を抑制させるのが今回の追加利上げの主目的ではない。しかし、低金利国からの借り入れが温床となっている以上は日銀による超低金利の継続がその大きな要因であったことも確かであろう。

 そういえば昨日、ラトIMF専務理事からの発言が少し気になっていた。ロイターによると「日本はデフレ圧力が完全に一掃されたことを明確にすべき」、「円安とキャリートレードが多くの国に影響していることは明らか」、 「キャリートレードの規模をはかるのは容易ではない」、「日本がより正常な金融政策へ移行するにつれ状況は変化」と日銀の利上げを擁護するような発言がIMF専務理事からあった。1月22日にIMFのラト専務理事は「日本経済は拡大が持続する見込みで、デフレ圧力は過去のものとなったとしながらも、インフレ圧力がないことを考えれば、日銀は利上げに慎重に対処すべきだ」とむしろ日銀の利上げを牽制する発言がみられていた。1か月の間で見方がどのように変化したのか。IMF専務理事の昨日のの発言は、今回の調整を見越していたようなものとなっていた。

 今回の調整幅は大きなものではあったが、それでも日銀が利上げを実施せずにいたならば、この過剰流動性による反動といったものはさらに強まっていた可能性もある。要因ともなった中国株の今後の動向に注意すべきではあるが、株式の動きが日本のバブル崩壊を思わせるような動きとなっていたものの、取り巻く経済情勢といったものは様相は大きく異なる。中国は2008年の北京オリンピックまでは少なくとも高い経済成長は維持されるとみているが、もしそういった見方に仮に変調をきたした際には注意も必要となろうか。
by nihonkokusai | 2007-02-28 10:41 | 債券市場
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