「政策委員の見方の別れ」
12月と1月の金融政策決定会合で追加利上げが見送られたのは、足元の経済指標にやや弱めのものが出たことなどにより経済指標を重視して慎重に見極めたいとの見方が審議委員の中でも強まったことによる。政策委員の中で、金利正常化に向けてフォワードルッキングを意識している委員と、経済指標を重視して慎重になっている足元ルッキング派の委員に分かれていた。
1月に利上げを主張したとされる3人の審議委員、須田氏、水野氏、野田氏は、金利正常化派と見なされよう。
そのほかの6人の委員は、データ重視派ながらもとりあえず足元データを見ることで慎重となっている委員と、経済データなどを見ながら景気認識の違いによって早期利上げに反対している委員とに別れていたのではないか。
1月の現状維持に賛成した委員は、武藤副総裁、岩田副総裁、福間委員、西村委員、春委員である。このうち福間委員はブルームバーグによると「GDPの高成長で世間的な理解を得られると判断する公算が大きい」と発言したと伝えられた。福間委員と春委員については、データ重視派ながらもとりあえず足元データを見ることで慎重となっている委員ではないかと思われる。
これに対して岩田副総裁はどうやら景気認識の違いによって早期利上げに反対している委員ではないかともみられており、もしかすると西村委員についても同様であるのかもしれない。
さらにもう一人の重要人物である武藤副総裁に関しては、これまでの発言からは金利正常派ではないかとも見ていた。ただし、日銀内部でも12月や1月は慎重論が強まったとも言われ、そういった空気を意識して慎重姿勢になっていたのではなかろうか。今後CPIが一時的にマイナスになる可能性もすでに指摘されているが、そういったことも睨んで慎重となっていた可能性もあった。ただし、武藤副総裁は日銀の副総裁という立場で総裁を支えるという役目もある。
日銀の政策委員の意見がこのように真っ二つに分かれたというのもめずらしいと言える。その反面、新日銀法となって金融政策は政策委員の多数決によって決められるという本来の図式がこれによって明確化されるとも言える。政策委員が決定会合においてそれぞれの意見を基にした議論を交わした結果が多数決というかたちで金融政策に反映される。その過程を見ることによって、日銀の金融政策の決定における透明性も強まるとともに、説明責任といったものもそこから見出すことも可能となろう。