「1.5%を抜けたなら」
懸念されているのが海外動向と原油価格である。中国は元の切り上げを実施したがその幅が予想より小幅に止まっていたことなどから、これによる影響は大きくはなかった。米経済は物価や賃金の上昇圧力が高まっているものの底堅い成長が続いている。9日のFOMCで10回目の利上げが実施されたように適格な金融政策でうまく舵取りされていると思われる。そして、ここのところ高値を更新し続けている原油価格についても、注意は必要ではあるが、日本の景気回復の腰を折るほどの影響とは今のところはなっていない。
長期金利の上昇要因となっているものに時間軸の縮小もある。今回の金利上昇はオペ金利の上昇など短期金利の上昇も伴っている。また中短期債も売られ2年債も11日に0.185%に上昇している。
日銀の福井総裁も今年末から来年初めにかけて、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比がプラスの領域に入っていく可能性があるとコメントしていたが、早ければ7月のコアCPIからプラスに転じる可能性がある。そして特殊要因が剥落してくる10月以降はコアCPIがプラスになる可能性が高い。一部報道によれば、日銀は来年前半にも量的緩和を解除するシナリオを描いているそうだが、たとえば今年10月から来年にかけてコアCPIがプラスを維持してきた場合には、量的緩和解除の条件は徐々に揃いつつある状況になろう。このため市場でも市場コンセンサスよりもやや前倒しで量的緩和が解除される見方も強まってきたものと思われる。
10年債の利回りが9月末までの目標値であった1.5%に接近し、5年債の利回りも0.7%に接近しつつある。ここは大きな節目とも見られ、投資家の押し目買いなども期待される。しかしここで下げ止まるかといえば、そうは思えない。日経平均株価のチャートなどを見ると大きく上抜けてきたことがわかるように、今回の新たな動きはまだ始まったばかりとも言える。
節目節目では投資家の買いが入ることで、一方的な下落とはならず緩やかな金利上昇になろう。長期金利の1.5%を抜けてきた際に、債券の次のターゲットとなるのが、5年の1.0%と10年の1.8%近辺かと思われる。