「2006年の債券相場を振り返る」
2006年の債券相場を振り返る上で、最大のトピックスと言えたのは日銀による量的緩和政策の解除とその後のゼロ金利政策の解除であろう。2006年に入り日本の景気自体は次第に回復基調が顕著となっていたが、物価を示す指標のひとつ消費者物価指数はなかなかプラスには転じてこなかった。それでも2005 年10月の消費者物価指数(生鮮食料品を除く)は前年同月比ゼロ、11月同+ 0.1%、12月も+0.1%、そして3月3日に発表された20061月分も+0.5%と1998年3月以来の高い伸びとなってきたことから、2006年 3月9日の日銀金融政策決定会合において、日銀は2001年3月から5年あまりにわたって続けた量的緩和政策の解除を決定した。
さらに2006年7月14日に開かれた日銀金融政策決定会合において、無担保コール翌時物金利の誘導目標をゼロに抑え込む「ゼロ金利政策」も解除され、これにより無担保コール翌時物金利の誘導目標は0.25%に引き上げられた。日銀による政策金利の引き上げは2000年8月以来となった。
10年債の利回りは1月には1.4%台となっていたが、日銀の量的緩和解除の可能性が高まってきたことから大手銀行などが中短期主体に売り圧力を強めたものとみられ、ほぼ一貫して利回りは上昇し続けた。量的緩和解除後も利回りは上昇を続け、4月18日に10年国債の利回りは2%ちょうどをつけてきた。長期金利が最後に2%台をつけていたのは1999年8月の2.040%であった。その後、5月に入っても2%をワンタッチしたが、結果的には 10年債利回りの2%は大きな壁となった。
7月のゼロ金利解除により再び2%近くまで10年債利回りは上昇したが、今度は2%には届かずに、利上げが実施されたにも関わらず、その後の長期金利はむしろ低下傾向を強めてきた。米債高や日本株の調整といった側面もあったが、8月末からの長期金利の大幅な低下のきっかけは、8月25日に発表された7月全国消費者物価指数(除く新鮮)であった7月全国消費者物価指数(除く新鮮)は2005年の新基準で+0.2%と発表され、予想された+ 0.5%を下回ったのである。これを受けて10年債利回りは一時1.6%まで低下した。
その後発表される経済指標は特に個人消費の伸びが乏しく、まだ物価の上昇も限られたものとなっていたこともあり、10年債利回りは年末にかけても1.6%台近辺の動きとなり比較的堅調な動きとなった。
2006年の債券相場はこのように、日銀の量的緩和解除の影響で一時的に2%台をつけたものの、その後は1%台での堅調な展開が続くこととなった。物価が落ち着いており、景気もそれほど大きな伸びとはならず、さらに需給面でも、2006年度のカレンダーベースでの国債発行額が113兆円程度までの減額が予想されるなど減少しており、税収増により 2007年度の国債発行額もかなり押さえられることが予想されている。このように国債の需給面では引き締まってきていることも、相場の下支え要因ともなった。