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「CPI基準改訂に伴う債券相場の上昇要因」


 今年の8月末からの長期金利の大幅な低下のきっかけは、8月25日に発表された7月全国消費者物価指数であった。

 7月全国消費者物価指において2005年の新基準で+0.2%と発表され予想された+0.5%を下回った。2000年基準から2005年基準に伴う修正値が市場予想の0.2%程度から実際には0.4%程度あった。これはある程度携帯電話の通信料分で説明が可能とみられる。いずれにしてもこれはあくまで技術的なものではあったが、相場は過剰反応を示し、10年債の利回りは1.8%から1.6%へと急低下している。

 これはCPIショックとも呼ばれているが、利回りは低下したものの債券価格は上昇していたわけで、株価の急落が伴っていたわけでもなく、債券価格の急上昇を示すにはショックという言葉を使うことにはやや違和感がある。

 それではなぜこういった債券利回りの急低下が引き起こされたのか。8月末にかけては米国の長期金利が低下していたこともひとつの要因とも指摘されている。米国経済においては住宅市場が下げ止まらずにFRBの追加利上げ観測は急速に後退し、むしろ利下げ観測まで出るなどしていたことも大きな影響があったとみられる。

 さらに債券相場の好需給も背景のひとつではあるが、このタイミングで需給が突然良くなったわけではない。むしろ意外であったのは、公社債投資家別売買高をみるとこの8月と9月に都市銀行が短期国債を除くと売り越しであったことである。

 CPI改訂値発表前に市場観測ながらもメガバンクが中期債主体に買いに転じたのではないかとの観測が流れていた。スワップ市場あたりで動きがあったのではないかともみられていたのだが、結果を見る限り、少なくとも現物債は売り越しであった。相場が大きく動く際にはメガバンクもしくは海外投資家が動いていることも多いが、今回はメガバンクが債券の上昇相場を演出したわけではないようである。

 そうなると疑わしいのが海外投資家ともなる。外国人投資家は7月には1兆円規模の売り越しであったものの、8月と9月はそれぞれ買い越しに転じている。さらにこの時期にはヘッジファンドの破綻などの影響で商品市況も大きく揺れ動いており、そういった流れがデリバティブなどを通じて円債にも波及していた可能性も否定はできない。

 ここにきて年内の日銀追加利上げ観測も再浮上しているが、現実には日銀はこのCPI改訂があっても方向性を変えているわけでもない。海外投資家などによる需給への影響に加え、米経済などを見ながら市場心理が揺れ動いていたことでこういった相場が演出されたものと思われる。
by nihonkokusai | 2006-10-25 10:48 | 債券市場
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