「秋葉原とポップカルチャー」
帰宅途中の乗換駅でもある秋葉原には良く散策することがあるが、ここにきて駅前の状況が様変わりしてきたように思われる。以前は平日の夕方にはJR秋葉原駅の電気街出口近辺にはメイドの格好をしたお姉さんが一人か二人いたが、最近では10人近く見受けられるとともに、そのお姉さん達の回りには海外からの旅行客とみられる集団があちらこちらにいるのである。もちろんその中には、メイドの格好のお姉さんと記念写真を撮っている姿も見受けられる。日本人の女性は、以前の着物から打って変わって常にあのような姿をしていると国に帰って広めてほしくはない気がする。
さらに電気街を歩いていても海外観光客を多く目にするようになった。以前は中国や韓国などからの観光客が多かったが、最近はいろいろな国から来ているようである。6月は欧米では卒業シーズンということもあり学生達が旅行に来ているのか、さながら夜の六本木かと見間違うぐらいの様相である。
ネットなどで調べてみると、どうやら秋葉原の商店を中心に組織されている秋葉原西口商店街振興組合は、国際観光振興機構(JNTO)、ビジットジャパン実施本部と協力して香港からの観光客に秋葉原を紹介するツアーを始めたとか。この記事によればこのツアーは、免税店の社員とボランティアが案内を行ない、主にフィギア専門店やガチャポン会館など秋葉原のポップカルチャーな部分を案内するそうである。
薄型テレビや電気部品とかではなく、さらにパソコンでもない「フィギアやガチャポン」というのが、今の秋葉原の様相を示している。さらに国土交通省が日本への海外旅行客増加を目指したキャンペーンでもある「ビジットジャパン」も伝統的な日本文化だけでなく、日本観光におけるこれらポップカルチャーの魅力を利用した海外への宣伝にも熱心であるとか。
オタクやアニメといった一部マニアに愛されていたものとして軽蔑のまなざしでみられていたようなものが、ひとつの日本の文化として海外から注目を浴びてきている。それがポップカルチャーと名前を変えられるといかにも文化的色彩が濃くなるが、オタクはオタクである。批判的にみる人も多いであろうが、私はこういった動きに対しては好意的にみている。
私が物心ついたときにはアトムや鉄人といったテレビアニメが放映されており、小学生のころからマンガ雑誌を読んで育ち、欧米のSFテレビドラマに夢中になり、その後のスターウォーズなどSF映画を夢中で観た世代である。大学時代にはすでにPC8001という自分専用のパソコンも保有していた。まさにオタクのプロトタイプのようなものである。
このようにまさに日本のポップカルチャーの隆盛とともに時代を過ごしてきたことで、私の同世代あたりから若い世代にかけて、こういったコンテンツが融合されてマニアックなものに進化してきたことで、ひとつの文化を形成してきた。もちろんそういった子供だましとも見えるものを文化と称することに抵抗を感じる人も多いであろうが、海外でも共感する人達が多いことで、日本のひとつの産業として大きな役割も期待されるものとなっている。
日本のポップカルチャーが日本観光の大きな魅力のひとつになりつつりも、秋葉原がその中心地となっているものと思われる。日本のポップカルチャーを中心とした観光を売り出す動きが官民で進められているそうであるが、その結果が最近の秋葉原駅周辺の状況に現れているのであろうか。