「最初のステップとは」
6月1日のブルームバーグによる福井日銀総裁との単独インタビュー記事の中で市場参加者の捉え方が分かれた部分があったため、今回はこの部分を中心に見てみたい。
「われわれの最初のステップが早ければ、2回目以降の判断にはむしろ幅が出てくると考えるのが普通だ。特に、ゼロ金利からスタートして、ゆっくり金利を上げていく。ゼロ金利から最初に踏み出すときがいつかは、いまだに全く予断を持っていない」
この発言の中の「最初のステップ」が「量的緩和政策の解除」を示しているのか、それとも「ゼロ金利の解除」を示しているのか、市場関係者の間で見方は分かれた。
日銀が今年3月に市場の予想より早く量的緩和解除に踏み切ったことで、ゼロ金利解除やその後の利上げが早まるのではないか、という見方が市場で強まっていることに対してのコメントであっただけに、「最初のステップ」が「量的緩和政策の解除」と受け止めた向きもあったようだ。しかし、詳しくみると「ゼロ金利解除」とも取れるのである。たとえば、
「ゼロ金利からスタートして金利を上げていくときは、1ステップ踏んだら、金利引き上げの重みが企業、あるいは景気全体にとってどれくらいのものなのか、事後の経済の動きの中できちんと測りながら、次のステップを踏まなければならない」
このコメントを読む限り、1ステップとはゼロ金利解除と取れる。そもそも「われわれの最初のステップが早ければ」という表現は過去形ではないことにも注意したい。もし量的緩和解除を最初のステップとして意識しているのならば、「われわれの最初のステップが早かったために」といった表現になるはずである。
日銀関係者の中でも、この最初のステップがどちらを示したものなのか見方が分かれているとも言われ、実際にどちらを意識したものなのかは福井総裁自身に聞いてみなければわからない。しかし、これまでの総裁の発言などを見ても、最初のステップは「ゼロ金利解除」としたほうがすんなりと受け止められると思うが、いかがであろうか。