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欧米の中央銀行が出口に向かうなか、日銀だけが出口に向かえないのは何故なのか

 6月13日の米国の金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)では、市場で予想されていた通り政策金利を年1.50~1.75%から1.75~2.00%に引き上げた。これは8人のメンバー全員一致で決定した。ちなみに次回からはFRB副議長に指名されているクラリダ氏と、同理事に指名されているボウマン氏が加わり、メンバーは10人となる。13日に発表された会合参加者による金融政策見通しによると、あと年2回の利上げを見込むことになっていた。これにより今年の利上げ回数は、これまて見通しの3回から計4回となる。議長会見が予定されている9月と12月のFOMCにおいて利上げが決定される可能性が強まった。議長会見については来年からは8回のFOMCすべてで行われることも発表された。

 欧州中央銀行(ECB)ECBも正常化のステップを歩み始めた。14日にECBは金融政策を決める政策理事会において、資産を大量に買い入れる量的緩和政策を年内に終了することを決めた。月300億ユーロの買入は9月まで続け、10月から12月にかけては月間の資産買入額を150億ユーロに減らし、買入そのものは12月で停止する。主要政策金利となるリファイナンス金利は、少なくとも来年の夏まではゼロ%のままとし、利上げはそれ以降になることを示した。資産保有額は維持することも発表しており、国債の償還分についてはその分は買い入れることになる。正常化に向けての慎重姿勢はイタリアの政治リスクや物価が目標を達成していないことも理由となろうが、市場に配慮していることも確かである。

 そして日銀は15日の金融政策決定会合において、長短金利操作付き量的・質的金融緩和策の維持を決定した。欧米の中央銀行が出口に向けて慎重ながらも舵を取るなか、日銀は非常時の政策とも言える異次元緩和策を継続している。

 ただし、現実には国債の買入規模を縮小しているなど出口戦略も意識しているかにみえるが、いまだに買入れペースの保有残高の増加額年間約80兆円と言う数字を残している。また長期金利の誘導目標もゼロ%程度としており、平時とも言える状況になっているにも関わらず、非常時のような対応を続けていると言わざるを得ない。

 何故、日銀は柔軟な対応を取れないのか。欧米の中央銀行が出口に向かうなか、日銀だけが出口に向かえないのは何故なのか。これは、日銀が大胆な緩和策を取れば物価のグローバルスタンダードとした物価の前年比2%の上昇は、いとも簡単に達成しうるとしたリフレ派と呼ばれる人達の意見を政府が日銀に押し込んだことが要因といえる。しかし、そのような考え方が間違っていたことはこの5年間の日銀の対応と物価の動きを重ねればわかるはず。

 日銀が目標として掲げてしまった2%の物価目標そのものが日本経済にとって適切なのか。黒田総裁は15日の会見で7月末に公表する新たな「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」に向け、物価について議論を深めていくと明言した。元々日銀は日本の物価についての適正な水準はゼロ近傍、もしくは前年比1%あたりを想定していたはずである。1%あたりとすれば、目標としている物価、つまり消費者物価指数(除く生鮮食料品)であれば、今年に入り一時1%台に乗せていた。つまり、物価目標の2%に達成していないものの、出口戦略に舵を取ったECBのように慎重ながらも日銀も出口戦略を採り得たはずである。しかし、日銀は2%を絶対目標のごとくしてしまって柔軟さをなくしてしまった。これにより頑なな姿勢を変えられずにいる。このあたり、7月の展望レポートに向けて、日本の経済実態に即した物価水準にあらためる、もしくはもう少し柔軟な姿勢に変化させることが必要ではないかと思われる。


by nihonkokusai | 2018-06-19 09:47 | 日銀
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