FRBの利上げペースは緩やかに
会合後に公表された声明文では、「世界経済と金融動向は引き続きリスクをもたらす」とし、イエレン議長は記者会見で「海外経済への不安感が金融市場の動揺につながっている」との懸念を示した。
ただし、米国景気については「失業率が4.9%に下がるなどほぼ完全雇用の状態にあり、米経済は拡大を続けるとみている」とし、物価上昇率も「エネルギーと食品を除いたベースでみれば上昇した」と述べていた。
昨日発表された2月の米消費者物価指数はエネルギー価格の低下から前月から0.2%低下した。しかし、全体から食品とエネルギーを除いたコア指数は前月比で0.3%の上昇となり、前年同月比では2.3%の上昇となった。この上昇率は2012年5月以来の高い水準となったようである。
FRBによる米国の景気や物価に対する見通しには大きな変化はなかったものの、中国などの経済動向や金融市場での年初からのリスク回避の動きなどから、FOMCの年内利上げに関する見方にはやや変化が生じた。
FOMCメンバーが示した四半期予測によると、2016年末時点のFF金利誘導目標は中央値で0.875%となっており、年内2回程度の利上げを示唆した。昨年12月時点の予測では4回程度の利上げが示唆されていた。
この四半期予測通りに金融政策が実施されるわけではないものの、これによって金融市場での利上げ予想に近づいたとも言える。年初のリスク回避の動きもあったが、それ以前に年4回の利上げはさすがに無理ではないかとの認識も市場では強かった。私も2006年の日銀のゼロ金利解除後の利上げペースなどからみても、半年に1回できるかどうかとみていた。
ただし、これにより年内利上げそのものが後退したわけではなく、あくまでも市場のコンセンサスに近い緩やかな利上げが実施されるであろうとの見方から、これを市場は好感した。
FRBはこのようにペースはさておき、正常化への歩みは止めていない。世界経済は現在、決して危機的な状況にあるわけではない。それにも変わらず危機的な状況にあったときよりもさらに踏み込んだ金融緩和政策を行っている中央銀行が存在しているのはどうしてなのだろうか。
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