原油安などによる市場の動揺
単純に考えれば、米債や米株は下落し、ドルは円やユーロに対して上昇することになる。しかし、イエレン議長はかなり時間を掛けて、久しぶりとなる利上げを市場に織り込ませてきた。テーパリングの開始決定時もそうであったが、特に米債の動揺は抑えられていた。もちろん米債が落ち着いている背景には、物価が低迷していることも要因であろうが、それ以上にFRBの市場との対話がうまくいったように思われる。
市場との対話という面ではECBや日銀はかなり苦慮していると思われるが、それについてはさておき、それではここにきての米国や日本の株式市場の調整は何が要因となっているのか。もちろん米利上げ観測がその要因のひとつにはなっていようが、それだけではない。
その要因のひとつに原油価格の下落がある。WTIは40ドル割れとなっており、いずれ30ドル近くに下落する可能性がある。このため、株式市場では石油関連株を中心に下落しているが、本来であれば原油価格の下げは日本などでは景気にはプラス要因となろう。しかし、米国株と同じように東京株式市場も下落しているのは、原油価格そのものの下落によるものというよりも、オイルマネーなどが株式市場から資金を引き揚げているためとの見方もできよう。もちろんチャートを意識したテクニカルな動きも入っていようが、先物の仕掛け的な動きばかりではなさそうである。
中国の景気減速に加えて原油価格の下落により、資源国経済への影響も深刻化しつつある。ここに米利上げも絡まり、ヘッジファンドなどの資金が新興国への株式から米国などに環流するような動きも出てきているのではなかろうか。これは総じてリスク回避的な動きとなる。このため、それが米債の下支え要因となっている可能性もある。また、円債もここにきてTDBの金利のマイナス幅が拡大してるのも、それが背景のひとつになっている可能性がある。
外為市場ではドルが円やユーロに対して下落した。上記の説明からでは安全資産として、ドルが上昇してもおかしくはないが、かなり米利上げが織り込まれていたところに、ECBに対する過剰な追加緩和への期待の反動も出たのではないかと思われる。追加緩和手段に限りがあるECBや日銀に対する過剰な期待は今後、後退することも予想される。米利上げ以降は、次第に焦点が、中央銀行の金融政策への度合いを低めてくる可能性がある。米利上げでドル円は130円を目指すといった予想もあるようだが、むしろ円高となる可能性も意識しておく必要もあるのではなかろうか。
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