珍しい日銀総裁会見の一部訂正
総裁会見において、これだけの大量の国債買入をしていくと、買入れの余地が少なくなるため、この点について総裁がどの程度懸念を持っているかとの問いに下記のように答えていた。
「確かBOEは、国債発行額の7割ぐらいまで買い進んだと思いますが──別に、7割まで買うと言っているわけではありませんが (注)──、今の時点で買入れに限界がすぐ来るとか、考慮しなくてはいけないということにはなっていないと思います」
この(注)として「BOEの国債買入れ額は、正しくは、国債発行額の約4割でした。」との修正が加わっていたのである。
30日の総裁会見は原稿を書きながら聞いていたが、この7割という数字を聞いて、これはいったいいつの時代の話なのだろうと関心を持った。そこで11月2日にこれに関するコラムを書こうかと思い、関連しそうな資料にあったったのだが、そのような数字は出てこない。
イングランド銀行は日銀のように国債引き受けは禁じられていない。戦時中などに国債残高の7割も保有していたのかと思ったが、そのような資料はなかった。ただし、2014年11月に黒田総裁は発行済みの国債のうちイングランド銀行が保有している英国債は約40%あったと発言していた。これはQEと呼ばれた国債買入による数字であると思ったが、結局、この4割という数字を言おうとして総裁は7割という数字を発言してしまったようである。
現在の日銀の国債発行残高に占める保有割合は3割弱であり、まだ4割にも達しておらず、あくまで数字上ではあるが、もし仮に4割になったとしても、あと100兆円程度の買入(償還分を考慮するとさらに多い)が可能となるわけではある。しかし、これは現実には難しい。年間発行額以上の買入となればどこかの投資家の保有分を購入するしかない。ゆうちょ銀行やかんぽ生命の資産の保有比率の変更等次第では、このあたりからの売却も考えられるものの、それでも日銀の国債買入の未達が発生するのが時間の問題となる。
そもそも中央銀行が国債を何百兆と買い込んでも、物価目標達成ができなければ何の意味のないことではある。いずれにしても日銀がここからさらに大きく国債を買い入れることはあまり現実味はないと思われる。
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