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今年最も注意すべきはFRBでもECBでもなく日銀

 日米欧の中央銀行の金融政策では「二極化」がキーワードとなりそうである。これはFRBとイングランド銀行がゼロ金利解除を実施してくる可能性があるのに対し、ECBと日銀はさらなる金融緩和に追い込まれることを意味している。

 FRBのゼロ金利解除、つまり利上げは今年6月のFOMCでというのがコンセンサスとなりつつある。しかし、今後のデータ次第では4月の可能性も残る。いずれにしても真っ先に出口から出るのが米国であると予想される。世界経済のなかで米国経済は順調に回復し、特に雇用の回復が著しく、今後も原油安なども手伝っての回復基調が継続すると予想される。サウジアラビアの石油戦略によってはシェールガス関連企業が痛手を食う可能性はあるが、米国全体でみれば原油安はプラス要因と思われる。ただし、物価は低迷しよう。

 米国よりも早く利上げをするかに見えたのが英国であるが、ここにきての経済データがあまり良くない。物価についても同様である。このため、イングランド銀行の利上げはかなり慎重になることも予想される。ただし、物価はさておき、景気回復の徴候が見られれば、再び利上げに向けての準備が進められる可能性がある。それがなければ年内の利上げは見送られることも想定される。

 ECBについては1月22日のECB理事会で量的緩和を決定するのではないかとの観測が出ている。12月のユーロ圏CPI速報値は、前年比マイナス0.2%となったが、マイナスとなったのは2009年10月以来となった。デフレ懸念の強まりにより何かしらの政策、特にドラギ総裁がどうしても実施したい量的緩和が現実味を帯びてきた。5000億ユーロの国債買入かとの観測も出ているが、まだハードルは意外と高いと思われる。ドイツなどの反対派を押さえられるのか。さらに日銀の大規模な量的緩和の効果が出てないことをどう意識するのか。そして、政策金利の下限をマイナスにしてしまっているなか、量的緩和によるマネタリーベースの増加をどのように実施するのかなどの技術的な問題も抱える。ユーロ圏の国債を買い入れるとしてどのような配分にするのかという問題も残る。現実にはECBの国債買入を主体の量的緩和はかなり困難さも抱えるが、それが実施されるときはいろいろと小技も必要となるし、説明責任も問われかねない。

 そして日銀であるが、今年はかなり難しい選択を迫られる可能性がある。2013年4月に量的・質的金融緩和、つまり異次元緩和を決定し、そのタイミングで都合良く物価がプラスとなり上昇してきた。しかし、消費増税がスタートした2014年4月に前年比プラス1.5%までいったところで、ピークアウトしてしまった。このため、日銀は2014年10月に異次元緩和第二弾を決定せざるを得なかった。原油価格の下落でそれ以降も消費者物価のプラス幅は縮小し、4月にむけて前年比ゼロ%近くになるとの予想もある。  消費増税の影響とか原油先物の下落とかの理由はさておき、気合いというか期待で物価が上がるとしたシナリオは完全に崩れた格好であり、異次元緩和第二弾も円安に頼らざるを得ないことを示した格好となった。それでもこのまま物価目標が達成できないとなれば、何かしら手を打たざるを得ないであろ。日銀総裁はそのための手段はいくらでもあるというが、現実には効果的な手段はほとんど見あたらない。これ以上の国債買入は危険であり無理もある。リスク商品の買入にも限度がある。期待で物価は上がらないことがはっきりすれば、むしろ日銀の信認問題にもつながりかねず、微妙な立場に追い込まれることも予想される。それでも追加緩和の可能性は強い。その追加緩和は円安誘導のため、6月にも予想されるFRBのゼロ金利解除にぶつけてくることもありえそうだが、その内容次第によっては、少し大げさながらも日本発の金融危機を招くこともありうるか。

 このように今年の日米欧の中央銀行の動向を占う上で、最も注意すべきはFRBでもECBでもなく、日銀であると考えている。

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by nihonkokusai | 2015-01-13 09:38 | 中央銀行
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