日銀とFRBのゼロ金利解除の違い
そもそも量的緩和政策とゼロ金利政策とは何であったのか。量的緩和政策とは本来の中央銀行の金融政策である政策金利が実質ゼロとなり、これ以上引き下げられないことで、それに代わって国債の買入れなどを通じて、ある一定量の資金を市場に供給することが目的となった。これは伝統的な金融政策に対して非伝統的手段と呼ばれた。
2001年から2006年の日銀はそのターゲットを日銀の当座預金残高に置いた。イングランド銀行は国債の買入れ規模と時期を示して買入れを実施した。これに対してFRBは毎月の買入れ額を目標に置いたのである。
このため、以前の日銀にとっての量的緩和の解除とは日銀の当座預金残高そのものを正常に戻すことになった。当座預金残高が目標とされたことで、主に短期市場に資金を供給していた。日銀は量的緩和を解除することにより、日銀当座預金残高を縮小させた。ただし、日銀は短期市場から資金を吸収したことで、比較的短時間に当座預金の残高を縮小させることができたのである。その作業が終わったあとで、ゼロ金利解除を行うことになる。
注意すべきは日銀は量的緩和解除の際も、ゼロ金利の解除の解除の際も毎月の国債の買入れについては減額していない(できなかったともいえる)。つまりFRBのテーパリングのような国債の買入れ額の縮小はしていなかった。ただし、日銀の保有額は中短期債主体であったこともあり、償還等をうまく使って減少させていた。
これに対してFRBの量的緩和は毎月米国債とMBSの購入額がターゲットになっていたので、量的緩和解除のためにはこの金額を徐々に引き下げる必要があり、これがテーパリングと呼ばれた作業である。10月のFOMCで毎月の購入額がゼロとしたことで、量的緩和が解除というか終了したことになる。ただし、当面は国債などの償還分は買い入れることになり、バランスシートそのものの縮小作業はあとで行うことになる。
FRBはバランスシートの縮小よりも、非伝統的手段から伝統的手段への復帰を目指すことが予想される。つまり金融政策のターゲットを再び金利に戻すことになる。そして、ターゲットを金利に戻すには、そのターゲットをゼロから動かす必要がある。つまりゼロ金利解除により、伝統的な金融政策に復帰することができる。
日銀も2006年3月に量的緩和政策を解除したあと、当座預金残高を通常の状態に戻し、7月に無担保コール翌時物金利の誘導目標0.25%に引き上げてゼロ金利政策を解除した。これにより、伝統的な金融政策に復帰したことになる。
テーパリングが終了し、量的緩和を解除したFRBの次のターゲットはゼロ金利解除となる。すでに量的緩和も解除できる環境にある以上、ゼロ金利解除に向けての環境も整いつつあるとみて良いかと思われる。その意味では、2006年の日銀の4か月ということないかもしれないが、6か月程度のタームを置いてゼロ金利が解除される可能性はかなり高いとみている。もちろんそれ以前にゼロ金利が解除される可能性もありうる。
FRBにとりゼロ金利政策を解除したのち、徐々にバランスシートの縮小を行ってくると思われる。日本の場合には日銀の国債の売りオペはタブー視されているが、米国でもこれは難しいかもしれない。償還される国債を短期のものに乗り換え、ゼロ金利解除後は償還分を乗り換えないだけでも残高は意外に早く減少してくる可能性もあり、これは米国債券市場にもあまり影響は与えないと予想される。
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