正常でないのか日本の長期金利
そのうえで「アベノミクスで景気を良くしていけば自然と長期金利は上がっていく」と指摘。「その際には国債の信認を失わせない、財政再建プランに対して政府がきちっとコミットしていくこと」が大事だと強調した。
このように甘利経済財政相は、現在の異常な(?)長期金利に警鐘を鳴らした。これは、アベノミクスにより景気は回復しつつあり、物価も上昇しているなかにあり、経済実態に即した長期金利はもう少し高いところにあるはずだが、いまだに超低位にあることに対しての警告のように思われる。
現在の日本の長期金利の超低位での安定には、いくつかの要因が考えられるが、その最たるものが日銀による国債買入となる。日銀の黒田総裁は6月7日の講演で「日本銀行の巨額の国債買い入れは、10年物長期金利を0.6%程度という低水準に抑制しています。」と明言している。その後、長期金利は0.5%近くまで低下している。
黒田総裁は次のようにも述べている。
「実質金利はマイナス圏で低下を続け、実体経済を刺激してきました。すなわち、日本経済は内需を中心に成長を続けています。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比は、昨年3月は-0.5%でしたが、今年の4月には消費税率引き上げの直接的な影響を除くベースで+1.5%に達しています。」
消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除くベースで、4月がプラス1.5%、5月がプラス1.4%、6月がプラス1.3%となった。日銀は夏場にかけて1%前半までプラス幅が縮小するとみているが、その後再びプラス幅は増加し、日銀の目標とする2.0%に近づくと予想している。
甘利大臣の「アベノミクスで景気を良くしていけば自然と長期金利は上がっていく」との発言は、景気ばかりでなく物価も意識しての発言かと思われるが、いまのところ自然に長期金利が上がっていくような状況には見えない。今年の4月以降はじりじりと低下しつつある。物価や景況感からみれば、確かにこの長期金利の超低位は奇異に映るかもしれない。足元のゼロ金利が長い金利にまで波及しつつあるように見えるが、同じゼロ金利政策を行っている米国の長期金利に比べても明らかに低すぎるようにも見える。
いったい何をきっかけに、日本の長期金利は自然に上がってくるのか。イングランド銀行やFRBが出口に向けた準備を進めるなか、世界的なリスクの後退により、国内景気も底堅く推移し、日本の物価が目標圏内に入ると、異常な事態は解消されるのか。それが解消されたとすれば何が起きるのか。
日本国債は売られないというのが、神話のようになりつつある。それを日銀がフォローしている。市場参加者は金利の失われた15年の状況にどっぶりと浸ってしまっているように見える。国債相場が動かないのは、経験則も大きな要因のひとつとなっているのではなかろうか。そこにリスクはないのか。甘利大臣はこのあたりについても、警告を発したようにも思える。
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