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日本でマイナス金利が発生した理由

 7月10日に3か月物の国庫短期証券(TDB)465回の入札が実施されたが、その入札前の取引(WI)において、マイナス0.002%の出合いがあった。日本でもマイナス金利が発生したのである。

 国庫短期証券とは、昔は短期国債(TB)や政府短期証券(FB)と呼ばれたもので、現在はこの2つが統合されて国庫短期証券として発行されている。期間は2か月程度、3か月程度、6か月程度、1年程度に分かれている。国庫短期証券は割引形式で発行され、法人のみ購入ができ個人は買うことはできない。

 WIとも呼ばれる入札前取引とは、まだ入札もされず発行もされていない債券を取引するものである。10日に入札される465回が入札前の日本相互証券での取引において100円00銭0厘5毛という値が出合ったのである。TDBは割引債なので通常は額面の100円を上回ることはない。しかし、今回その額面を上回り、日本でもマイナス金利が発生したことになる。

 ただし、日本でのマイナス金利の発生は今回が初めてではない。2001年から2006年まで続いた量的緩和の時代にマイナス金利は発生していた。このときは日本の銀行が海外から資金調達する際にジャパンプレミアムが付いていた。つまり為替スワップ市場において、一部の外銀がマイナスの金利(円転コスト)で円資金の調達が可能となっていたため、為替スワップ市場で調達した円資金を、無担保コール市場をはじめとする短期金融市場にマイナス金利で放出したケースがあった(日銀の「短期金融市場におけるマイナス金利取引」などに詳しい)。

 さらに国債市場では業者は保有している国債の償還手数料が得られることで、償還が迫った国債を償還手数料の範囲内で投資家から購入し、その結果、マイナス金利が発生することもあった。ちなみに今回のTDBのマイナス金利発生時の価格は100円00銭0厘5毛だが、この償還手数料は6毛あり、これを購入した業者は結果として1毛儲かるかたちにはなる。1億円購入して100円となるとコストに見合うかどうかはさておき、表面上は損失にはならない 。

 何故、日本でもこのようなマイナス金利が発生してしまったのか。ECBはすでに政策金利の下限部分をマイナスとしたことでマイナス金利が発生した。しかし、日銀は政策金利の下限ともなる超過準備の付利はプラス0.1%のままであり、マネタリーベースを増やすためには、ここをマイナスにするなどもっての外という状況にある。

 しかし、今回の日本でのマイナス金利の発生の予兆はすでにあった。7月4日に新発3か月物TDBがゼロ%で出合い、8日に新発6か月物TDBが入札結果発表後の流通市場でゼロ%で出合っていたのである。これを受けて10日の3か月物TDBの入札では、マイナス金利もありうるとの観測とも流れていた。そのあたりも意識して、マイナス金利を付けてしまったということであろうか。

 この3か月物TDBの入札の結果は100円とか100円を上回るようなことはなく、最低落札価格99円99銭2厘0毛、平均落札価格99円99銭5厘4毛となって、TDBとしてはテール(最低落札価格と平均落札価格の差)が流れ(広がることを流れると表現する)、このため入札後の取引ではプラス0.025%が出合った。マイナス金利は一時的な弾みで付いてしまった格好である。

 それでは何故、これほどまでに短期債への需要が強いのか。大きな背景としては日銀の量的・質的緩和による国債買入があるが、それとともにECBのマイナス金利を含めたパッケージの緩和策も加わり、溢れた資金が日本国債にも広がったためとの解釈も可能となる。

 10日に発表された6月29日~7月5日の対外及び対内証券売買契約等の状況によると、海外勢は対内短期債投資を1兆6688億円の買い越しとなっていた。国内の銀行による期末のバランスシート調整や担保要因等による可能性とともに、ECBのマイナス金利海外からの需要があり、そこにベーシススワップなどが絡んだ需要が入り込み、一時的にマイナス金利の発生となったとみられる。

 しかし、入札ではさすがに国内の投資家はマイナス金利では、保有目的としての説明が難しくなる。そのため海外需要はあっても国内需要は引いてしまったことで、昨日の3か月物TDB入札の結果となったものと思われる。ただし、日銀の巨額買入の存在により、状況次第ではゼロ金利やマイナス金利での出合いは今後も発生しうると思われる。

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by nihonkokusai | 2014-07-14 08:12 | Comments(0)
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