骨太の方針と長期金利の上昇リスク
基礎的財政収支半減の目標はそれほどハードルは高くはない。2014年度予算では消費税率の8%への引上げとともに、景気回復に伴う所得税や法人税の税収増が寄与することで、基礎的財政収支はかなり改善する見込みであり、2015年度での目標達成の可能性は十分可能なところにいる。
ただし、今回出された「新たな成長戦略」のひとつの柱でもある法人税の実効税率を来年度から引き下げるとの案についても、いまのところ財源は特に明記されておらず、また景気動向次第では大型の補正予算が組まれ、そこにあらたな財源が必要とされるようなことも出てくる可能性はある。
最終的には2020年度までには基礎的財政収支の黒字化を達成するとしている。これは東京オリンピックの時期とも重なり、国内外から日本の財政状況に対する注目も集まろう。こちらも達成させることが、日本の信認を維持させるためにも必要となる。年内とされる2015年10月に消費税率を10%に引き上げるかどうかの判断についても注目すべきものとなる。
政府としては財政健全化の手を緩めるつもりはないかもしれないが、アベノミクスの三本の矢が大胆な金融緩和と積極的な財政政策、成長戦略となっている。これはむしろ財政健全化を急がずに、日銀に大量の国債を買わせ、その分、時間を稼いでいるようにも見えるところが気になる。
日銀はデフレ脱却を旗印にし、たとえ2%の物価目標を達成したとしても簡単には手綱を緩める気はなさそうである。現在の大量の国債買入はかなりの期間維持されることも想定され、その分政府としては国債発行が楽になる。市場もいまのところ素直に日銀の国債買入の影響を受けて10年国債の利回りである長期金利は0.6%近辺に張り付いている。長期金利は財政リスクを意識させるような動きとはなっておらず、いわゆる財政リスクプレミアムはゼロ近傍にある。
日本の財政がGDP比などでみてここまで悪化しているにも関わらず、長期金利には財政リスクが反映されておらず、さらには日銀が引受ではないものの、発行額の7割もの国債を買い入れているこの構図は果たして健全なものと言えるのか。
長期金利の跳ね上がりへの懸念を主張しても、結局は狼少年となってしまっている。しかし、デフレから脱却というのであれば、長期金利も失われた15年から脱してくる可能性も当然ありうる。このリスクを考慮するのであれば、財政健全化を急ぐことも大きな矢として必要であるのではなかろうか。長期金利が上がってしまってからでは、身動きが取れなくなることも予想される。
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