長期金利と名目成長率の逆転現象は危機の前触れか
経済協力開発機構(OECD)によると、米国とドイツは2010年、日本は2013年から名目のGDP成長率が長期金利を上回った。1980年以降ほとんどの年で名目成長率が長期金利を下回っており、二つの水準が逆転するのは異例とされる。
歴史を振り返ると、名目成長率が長期金利を上回る逆転現象が起こったのは、日本はバブル経済が最盛期だった1988~1990年。米国ではITバブルがあった1998~2000年、リーマン・ショック前の2003~2006年。ドイツでも2006~2007年に逆転現象が起こった。長期金利が名目成長率を下回った時期はいずれもバブルとぴたりと重なり、その後、さほど時を置かずにバブルが崩壊し、金融経済ショックが発生している。
今回の日米独の長期金利と名目成長率の逆転現象は、リーマン・ショック、さらにはギリシャ・ショックと度重なる金融危機に対処するための日米欧の中央銀行による大規模な金融緩和が影響していることは確かであろう。日銀はリスク後退時にさらなる大規模な追加緩和を行ったことで、日本の長期金利と名目成長率の逆転現象が生じた。欧州の信用危機により大きく上昇していたイタリアやスペインの長期金利は、今度は過去最低を記録するなど極端な動きを見せている。
現在の日米欧を取り巻く状況がバブルかと言えば、そのようには感じられない。大きなリスクが後退し景気も回復しつつあり、日本の物価も上昇してきたところである。しかし、長期金利は0.6%という低水準に止まっている。
米国ではダウやS&P500種が過去最高値を更新するなどしており、これもある意味バブルという現象を示唆している可能性がある。バブルは崩壊するまではバブルとはわからない。長期金利と名目成長率の逆転現象は今後、大きな地殻変動が起きる可能性を示してはいまいか。
あまりに動かない日本の債券市場であるが、それは今後の大きな変動が起きることを示唆している可能性もある。どのような動きが今後、出るのかはわからないが、その兆候を見逃さないようにし地殻変動に備えておく必要もありそうである。
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