高橋財政とアベノミクスの相違点
デフレからの脱却事例としては、麻生財務相の指摘があったように1931年の高橋是清蔵相による政策が挙げられる。そこで今回はデフレからの脱却を目的とした高橋財政と呼ばれた政策とアベノミクスの相違点について考えて見たい。
高橋財政の大きなポイントは、「金本位制の離脱」にあった。それまでは金本位制を維持するために金融引き締めを行っていた。当時のコールレ-トは6.6%と高水準にあり、長期金利も5.9%近辺にあり、国債発行残高の対GNP比率は47.6%と現在に比べてかなり健全な財政となっていた(白川前日銀総裁の講演内容を参考)。
高橋是清は、金本位制の離脱により円安を導き、低金利政策を可能にさせるとともに、日銀引受という形式での国債発行を可能にさせた。低金利政策とともに、積極的な財政政策を行いやすくなり、大量の国債発行による公共事業や軍事への投資が可能になったのである。効果的な金融政策と財政政策を可能にする余地が十分あり、金本位制の離脱によりその政策を進めることが可能となった。
高橋是清でなくても、同様の政策は可能であったろうが、1927年の片岡蔵相失言をきっかけとした金融恐慌を高橋是清が鎮めた記憶も新しく、高橋是清であれば何とかしてくれるとの市民の期待がさらに効果を高めた側面があったものと思われる。
それに対してアベノミクスの主軸となっている、大胆で次元の違う金融緩和は、すでに超低金利状態にあり、極めて緩和余地の乏しいなかで行われている。長期金利も1%を割り込み、低下余地が少ない。国債についてはその残存額が巨額であるにもかかわらず、国債市場は整備されており、国債の消化にもまったく問題がない状態にあった。そこに取り入れたのは、2%の物価目標とそのための日銀による大量の国債買入であった。ところが、日銀が国債を大量に買い入れる効果よりも、それによる流通市場への悪影響のほうがむしろ懸念されている状況にある。
高橋是清は日銀による国債引受という禁じ手を使ったものの、日露戦争の戦費調達に活躍し、前回の金融恐慌を鎮めた高橋是清であれば、出口政策も問題はないとの見方も強かったであろうと思われる。自らもそれをコントロールできるという自負もあったようであるが、それは結果として二・二六事件で不可能となる。
アベノミクスの中心となっているのは、過去に首相経験のある現首相と財務相、そしてアジア開発銀行総裁であり国際金融にも詳しい人物が日銀総裁となっている。たしかに、その方々をひっくるめると、首相・蔵相、日銀総裁等々を経験した高橋是清と似たような状況といえるかもしれない。現実にアベノミクスは円安・株高を演出したことも確かである。しかし、当時の高橋是清ほどのカリスマ性を持っているようには思えない。
今回は特に海外投資家が異次元緩和政策への期待から海外投資家が大きく動いてきたと思われるが、高橋財政の当時とは、大きく環境が異なっていることに留意する必要がある。大胆な政策を打ったのは良いが、それで高橋財政時のような効果が出てくるかどうかは、環境の違いからかなり不透明であり、それがむしろ今後のアベノミクスのリスクになってくるものと思われる。
アベクロ政策と国債問題
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高橋財政の大きなポイントは、「金本位制の離脱」にあった。それまでは金本位制を維持するために金融引き締めを行っていた。当時のコールレ-トは6.6%と高水準にあり、長期金利も5.9%近辺にあり、国債発行残高の対GNP比率は47.6%と現在に比べてかなり健全な財政となっていた(白川前日銀総裁の講演内容を参考)。
高橋是清は、金本位制の離脱により円安を導き、低金利政策を可能にさせるとともに、日銀引受という形式での国債発行を可能にさせた。低金利政策とともに、積極的な財政政策を行いやすくなり、大量の国債発行による公共事業や軍事への投資が可能になったのである。効果的な金融政策と財政政策を可能にする余地が十分あり、金本位制の離脱によりその政策を進めることが可能となった。
高橋是清でなくても、同様の政策は可能であったろうが、1927年の片岡蔵相失言をきっかけとした金融恐慌を高橋是清が鎮めた記憶も新しく、高橋是清であれば何とかしてくれるとの市民の期待がさらに効果を高めた側面があったものと思われる。
それに対してアベノミクスの主軸となっている、大胆で次元の違う金融緩和は、すでに超低金利状態にあり、極めて緩和余地の乏しいなかで行われている。長期金利も1%を割り込み、低下余地が少ない。国債についてはその残存額が巨額であるにもかかわらず、国債市場は整備されており、国債の消化にもまったく問題がない状態にあった。そこに取り入れたのは、2%の物価目標とそのための日銀による大量の国債買入であった。ところが、日銀が国債を大量に買い入れる効果よりも、それによる流通市場への悪影響のほうがむしろ懸念されている状況にある。
高橋是清は日銀による国債引受という禁じ手を使ったものの、日露戦争の戦費調達に活躍し、前回の金融恐慌を鎮めた高橋是清であれば、出口政策も問題はないとの見方も強かったであろうと思われる。自らもそれをコントロールできるという自負もあったようであるが、それは結果として二・二六事件で不可能となる。
アベノミクスの中心となっているのは、過去に首相経験のある現首相と財務相、そしてアジア開発銀行総裁であり国際金融にも詳しい人物が日銀総裁となっている。たしかに、その方々をひっくるめると、首相・蔵相、日銀総裁等々を経験した高橋是清と似たような状況といえるかもしれない。現実にアベノミクスは円安・株高を演出したことも確かである。しかし、当時の高橋是清ほどのカリスマ性を持っているようには思えない。
今回は特に海外投資家が異次元緩和政策への期待から海外投資家が大きく動いてきたと思われるが、高橋財政の当時とは、大きく環境が異なっていることに留意する必要がある。大胆な政策を打ったのは良いが、それで高橋財政時のような効果が出てくるかどうかは、環境の違いからかなり不透明であり、それがむしろ今後のアベノミクスのリスクになってくるものと思われる。
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by nihonkokusai
| 2013-05-10 09:38
| 日銀


