日銀の国債買入の下限金利の撤廃は輪番オペにも適用
この長期国債の買入における下限金利の撤廃について、当日は市場関係者の間で一部混乱があったようである。これは日銀は日銀券ルールに基づく国債買入(輪番オペ)と、資産買入等の基金による国債買入を行っており、今回の下限金利の撤廃について通常の買入である輪番オペにも適用されるのかということであった。
19日の決定会合後に発表された公表文の「金融緩和の強化について」によると、金融緩和を一段と強化する観点から「資産買入等の基金」につき、以下の決定を行った、とある。下限金利の撤廃については、長期国債の買入れをより確実に行うため、「当該買入れにおける入札下限金利(現在、年 0.1%)」を撤廃する。社債の買入れについても同様とする、としている。つまりこれには輪番オペに関しては触れていない。私自身はこの表明で、輪番オペも基金による買入も両方適用されると解釈してしまったが、確かに輪番オペもそうなるとはどこにも表記がなかった。
これについては、総裁会見で記者から次のような質問があった。
「本日、長期国債買入れの入札下限金利を撤廃しましたが、輪番オペの下限金利についてはどうされるお考えでしょうか。」
この質問に対する総裁の回答は以下の通り。
「銀行券見合いの長期国債買入れの下限金利については、執行部にその運用が授権されていますが、資産買入等の基金に関する本日の決定との整合性を考えれば、入札下限金利は撤廃されることになります。その際、銀行券見合いの長期国債買入れについては、買入対象を残存 3 年以内に限っていないため、入札下限金利も全ての残存期間について撤廃されることになります。」
つまり資産買入等の基金による国債の買入は、金融政策決定会合での決定事項であるが、輪番オペに関しては日銀の執行部マターとなっているため、こちらについては特に発表をしなかったものとみられる。ただし、資産買入等の基金に関する本日の決定との整合性を考えれば、入札下限金利は撤廃されることになると総裁は指摘していたが、このあたりは過去の経緯を知らなければ、市場参加者も理解しづらい部分であり、本来であれば公表文に注釈として付け加えるべきではなかったか。
ちなみにもし「日銀券ルール」そのものについて、何かしら変更があるとすれば、これは執行部マターではなく決定会合マターになると思われる。これは下記の措置が2009年1月22日の金融政策決定会合で明文化されたためである。
参考、2009年1月「長期国債買入れの当面の運営について」
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2009/mok0901c.pdf
輪番オペによる国債の買入対象は特に残存3年以内に限っていないため、入札下限金利も全ての残存期間について撤廃されることになると白川総裁は指摘していたが、まあ超長期とかの長い期間の金利については、さすがに意識することはないでしょうが、結果として全期間適用ということになる。
<お知ら>
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