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今回の日本の長期金利上昇の要因

 最近の長期国債先物(債券先物)のチャートを見ると、7月23日から25日にかけて連日144円64銭が当日高値となっていたが、この144円64銭が3月半ばあたりからの上昇相場における目先の高値となった。10年債でみると7月23日から26日にかけて0.720%まで連日買われていたが、やはりこの0.720%で利回りは底打ちした。

 その後の債券先物の動きをみると、7月31日にいったん144円を割り込んだが、そこから8月3日に144円57銭まで買い戻されている。10年債も0.730%まで利回りが低下した。この背景には、8月2日のECB政策理事会で国債の買い支え等が発表されず、スペインの10年債利回りが再び7%台に乗せるなど、あらためてリスク回避の動きが出ていたことがある。

 ただし、この間の日本の株式市場の動きを見ると、日経平均は8月3日に一時的に下げてはいたがすぐに切り返すなど、7月25日あたりから上昇相場が継続しており、これは米国のダウ平均なども同様の動きとなっていた。また、外為市場でもあきらかに円高の動きが止まり、ここ数日はやや円安の動きを強める格好となっていた。

 債券先物は、その後、8月6日あたりから下落基調となる。そのきっかけとして自民党が衆院への内閣不信任決議案や、参院への首相問責決議案を提出する構えを見せ、消費増税の行方が不透明になったこと、さらに7日の債券先物のシステム障害があった。ただし、これはひとつのきっかけであり、8月3日の高値144円57銭から16日の安値143円27銭までの下落については、海外のリスク回避のためのポジションを解消してきたことが最大の要因であった。

 これは、この間の米国債、ドイツ国債、英国債の動向、さらには欧米の株式市場と東京株式市場の動向、そして外為市場の動きをみれば一目瞭然である。つまり円債もリスク回避という理由で、海外投資家などにより買われた反動が起きたということであろう。

 特に7月23日あたりにかけては、ドイツの2年債利回りがマイナスとなり、また10年債利回りも歴史的な低水準となり、米国債も同様の動きとなっていた。日本の長期金利も0.8%を大きく割り込み、0.7%に迫った。欧州の信用不安は燻り続け、不安解消への有効な手段は考えられなかった。欧州の景気悪化懸念もあり、世界経済への影響も危惧され、一部の国の国債利回りが歴史的水準にまで低下した。

 しかし、欧州の信用問題に関して、スペインの財政も問題視されたが、市場で懸念されていたのはむしろスペイン国債の利回り上昇であった。これについては7月25日に、ECBのドラギ総裁がロンドンでの講演で、(ソブリン債の)高利回りの問題はECBの責務の範囲内にあるとし、ECBは責務の範囲内で、ユーロ存続のために必要ないかなる措置を取る用意があると表明するなどしたことが、市場の不安心理をやや後退させた。

 このように今回の日本の長期金利上昇は、その前の利回り低下が外部要因によるものであったと同様に、欧米市場動向による外部要因であったことは確かである。このため、今後、まだ調整が続くのか、それともどこかのタイミングで底打ちするのかも、海外動向次第ともいえるのではなかろうか。

 日本の長期金利が上昇したと言っても、いまのところは0.720%から0.860%(8月16日)までに過ぎないわずかな調整である。特にここにきての動きの背景には、欧州の政治家も夏休み等で政治家の動きが鈍く、またロンドン・オリンピックの開催もあり、ユーロ圏の動向にあまり関心が持たれなかった面もあろう。

 しかし、来週はさっそくギリシャとドイツ、フランスとの首脳会談を控えているなど、あらためて財政危機が意識される可能性もある。ただし、今回の円債を含めた調整により、上値が重くなることも確かとみられ、もし10年債利回りが0.720%を下回るとなれば、相場の地合が大きく変わるぐらいのあらたな材料が必要となりそうである。


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by nihonkokusai | 2012-08-18 11:11 | 債券市場
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