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日銀は強力な金融緩和を推進し続けるのか

 3月28日に千葉県での宮尾龍蔵審議委員の講演内容が日銀のサイトにアップされた。今回はこの内容について見てみたい。

 その前に宮尾審議委員は2010年3月26日に日銀審議委員に就任したので、就任後2年が経過したことになる。その間、2011年10月27日の金融政策決定会合では資産買入等の基金を50兆円程度から55兆円程度に5兆円程度増額することに一人反対していた。この際に宮尾委員は資産買入等の基金を10兆円程度増額する議案が提出していた。また、今年3月14日の決定会合でも資産買入等の基金を5兆円程度増額し、70兆円程度とする議案が提出したが否決された。この際には現状維持との議長提案には賛成票を投じている。

 これらの動きから宮尾委員はハト派的なイメージを持たれていると思われる。このため今回は「金融政策運営」に関する部分を中心に見てみたい。

 2月14日に日銀は大きな政策変更を行ったが、これについて「強力な金融緩和を推進し ていくと明言し、積極的な緩和姿勢をより明確にした」と指摘しているが、その効果波及経路については、「金利を通じる経路やポートフォリオ調整を通じる経路の両面から、長めの金利やリスクプレミアムの低下をもたらし」、「借入コスト、株価・為替レートを含む様々な資産価格、銀行貸出などに働きかけ、企業・家計の支出に影響を及ぼして、最終的には景気・物価にプラスの効果を及ぼしていくという経路」を想定しているという。

 2月の決定後の状況を振り返ると、「今後の積極的な金融政策運営に対する見通し(根拠を伴って形成される予想)を通じて、長めの金利や人々のリスクテイク意欲に働きかける形で、2 年債金利の低下と円高の修正および株価上昇がみられました」とある。2月14日の日銀の政策変更の効果として、円高修正と株高を上げている。つまりこれは円安と株高の動きを促進させようとの意図があったとみられる。「円高修正・株高の流れが形成されてはいましたが、2月の決定もそういった動きを形成する一因になったとみられます」とも発言している。

 「足もとまでの金融環境の改善傾向が、海外経済の改善等とともに続いていけば、それが起点となって、企業収益あるいは慎重な企業経営者のマインドも好転し、前向きな投資支出等が増え、同時に成長力・付加価値創造力が高まることが期待されます。円高修正や株高の動きは、消費者心理の改善や外国人観光客の増加などにもつながり、国内需要を一層刺激する可能性もあります。そして、こうした動きは景気の持続的回復と物価の緩やかな上昇をもたらす方向に働くでしょう」

 上記の発言を見る限り、日銀による実質的なインフレ目標の導入と追加緩和の目的が、円安や株高の後押しであり、それにより景気回復に繋げようとしたことが伺える。過去にも日銀は今回と同様に円高や株安を意識して、金融緩和を行ったことがある。プラザ合意後の急激な円高への対策は、日銀の金融政策に押し付けられ、これがバブルを加速させたとも指摘されている。

 今回も日銀は、この宮尾委員の指摘を見る限り、円高対策が大きな目的であり、さらに1%の物価上昇率を目指し、それが見通せるようになるまで金融緩和を強力に推進するという形でコミットメント(約束)をより明確にしたことにより、今後、さらなる追加緩和を行ってくる可能性が高い。

 もちろんこれには「潜在的な副作用に対する適切な目配り」もしてくるであろうが、少なくとも物価が上昇してこない限りは、強力な金融緩和を推進してこよう。となれば、いずれ日銀の金融政策が脱デフレを成功させることも考えられるが、それが景気回復以上に資産価格の上昇を招きバブルの温床となる可能性もある。またデフレ脱却は現在の日本経済にとり悪いことではないものの、長期間、デフレに慣らされた日本経済にとって物価の上昇は、各所に大きな衝撃を与える可能性もある。

 2月の日銀の政策変更は市場の動向を見る限りにおいて成功を収めたといえる。しかし、中央銀行による金融政策頼みの対策はいずれその副作用を招くことが予想される。日銀はこの先、アクセルをさらに踏み込むことはあっても、よほどのことがない限りブレーキを踏むことはできなくなる可能性がある。それによる先々への懸念も今回の宮尾委員の発言から感じた次第である。


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by nihonkokusai | 2012-03-30 10:04 | 日銀
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