意外に興味深いカード利用の国際比較
その日銀のレポートの題名は「最近のリテール決済を巡る動向」というもので、昨年12月15日に日銀の決済機構局が出したものである。
「最近のリテール決済を巡る動向」 http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/data/rel111222a5.pdf
ここで興味深いのは「小口決済手段の国際比較」の箇所である。まず、「クレジットカード」年間決済金額を名目GDPで割った数値を米国と英国、そしてドイツと日本を比べた結果、やはり米国がトップであった。しかし米国は2008年から2009年にかけやや減少しており、これはリーマン・ショックなどの影響が出ていたものと推測される。これに対し日本はこの期間を含めて右肩上がりになっていた。このため、クレジットカード年間決済金額/名目GDPでは、すでに英国を抜いている。
また、この数値ではドイツに関してはゼロに近い状態が続いている。ドイツ人がクレジットカードは全く使わないということは考えづらい。そこで調べて見ると、ドイツではECカードと呼ばれる多機能なICカードがクレジットカード以上に使われているようである。つまり、それはデビットカードと呼ばれるものである。 ちなみに、デビットカード(Debit Card)とは、1取引毎に銀行の口座から(即時に)引き落とされる決済サービスの総称名であり、日本ではJ-Debitサービスというサービスがある。
そのデビットカードの年間決済金額/名目GDPというのもこの資料で確認できる。それによると、英国が右肩上がりで上昇しており、英国はクレジットカードよりデビットカードを利用する人が増えているようである。米国でもデビットカードを利用する人が増加しているようで、ドイツでもある程度利用されていることが伺える。それに対して日本ではグラフ上ではほぼゼロに近い状態となっている。
欧米ではクレジットカードよりもデビットカードの利用が増加している。できるだけ借金しての買い物は控えようということなのであろうか。それに対して日本でのクレジットカードの利用額の伸びは、米国のように借金しても物を買うという消費構造に向かっているというよりも、クレジットカードが利用できる場所の増加で利用する機会が増えたためではないかと推測される。
そして、電子マネー年間決済金額/名目GDPというグラフもある。これをみるとシンガポールが非常に高い数字となっている。シンガポールでは「ez-link Card」と呼ばれる電子マネーが普及しているようで、人口を遙かに超える枚数が発行されているそうである。ただし、そのシンガポールは2009年から2010年にかけてはやや落ち込んでいる。これに対して急速に伸びているのが日本である。これはスイカやパスモなどの普及が大きく影響していると思われる。また、韓国も伸びている。これに対してドイツやフランスではほぼゼロの状態にある。
そして、もうひとつ現金流通残高/名目GDPというグラフを見ると、ユーロ圏、米国、英国に比べてダントツに高いのが日本である。電子マネーやクレジットカードの利用が伸びてはいるものの、やはり現金そのものを日本人は持ち歩いていることが伺える。東日本大震災の際に、現金しか利用できない状況を私も経験しており、今後も日本人の財布の中から現金が消えることは考えづらい。
このようにリテール決済の状況は、いろいろと国ごとに特色があるようで、これは現地に滞在したことのある人は知っているかもしれないが、意外と実情を知らない人も多いのではなかろうか。このようなリテール決済の動向が景気に直接影響するようなことはないかもしれないが、それぞれの国の特色を知っておくと、消費動向をみる上でも参考になるのではなかろうか。
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