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国内格付け会社による日本国債格下げの可能性強まる

 11月30日に日本の格付会社のひとつ株式会社格付投資情報センター(R&I)は、日本の発行体格付をモニター(格下げ方向)に指定すると発表した。

 R&Iの発表によると、「日本の発行体格付を格下げ方向のレーティング・モニターに指定した。年内に新たな格付を公表する。格下げする場合も、その幅は1ノッチにとどまる可能性が高い」とした。

 つまり今回、日本の外貨建て・自国通貨建て発行体格付けAAAを引き下げ方向のレーティング・モニターに指定し、特別な事情が発生するなどしない限りは、年内、つまり1か月以内に日本の格付けを1ノッチ引き下げる可能性が出てきたことになる。

 ただ、すでに8月16日のウォール・ストリート・ジャーナルでは、格付投資情報センター(R&I)のアナリストが、来年度の予算に想定以上の緊縮財政措置が盛り込まれない限り、年内にも日本国債の格付けを引き下げる可能性が高いと警告したと伝えていたこともあり、今回の日本国債の格下げ方向のレーティング・モニターへの指定はほとんど市場には影響はなかった。

 日本国内の代表的な格付け会社に格付投資情報センター(R&I)と日本格付研究所(JCR)があり、このうちR&Iは2001年3月から日本国債格付けの見通しをネガティブとしていたが、格下げそのものは見送ってきていた。

 それに対してムーディーズやS&Pは幾度か日本国債の格下げを行なってきた。最近では8月24日にムーディーズが日本政府の自国通貨建て・外貨建て債務格付けをAa2からAa3に一段階引き下げている

 日本の財政が悪化してきたのは今に始まったわけではない。1998年11月にムーディーズが初めて日本国債の格付けを引き下げたが、すでにこの頃から本格的に日本の財政への懸念が強まりつつあったのは事実である。ただし、日本国債は国内資金でほぼ賄われ、その国内資金にはまだまだ余力もあったことで、格付け会社による格下げは市場にはほとんど影響はなかった。市場が動揺しなかったのは、国内格付会社が格下げをしてこなかったこともひとつの要因とも言えた。

 それではなぜ今になって、R&Iが日本国債の引き下げを示唆してきたのであろうか。それを最初に示唆した日付けがその要因を示しているのかもしれない。たとえば今年8月に民主党の代表選が行われたが、その結果次第では財政規律が緩むという懸念があった可能性がある。

 それとともに8月6日に、米国の格付会社であるS&Pが、自国米国の長期格付けを最上位のAAAからAA+に1段階引き下げたことも大きく影響していたのではないかと推測される。米国の格付け会社もついに自国の国債を格下げしたことで、日本の格付け会社も自国の国債の格下げに踏み切る後押し要因になったのではなかろうか。

 国内の格付会社が自国の国債の格付けを引き下げるということは、大きな出来事と言えるが、たとえ格下げがあったとしても市場へのインパクトは限られよう。格下げされたからといって、すぐに日本国債への信認が後退したり、現在の国債需給に変化が生じることはないとみられるためである。

 ただし、R&Iは日本ソブリンを格下げ方向でレーティング・モニターにしたことに伴い、15の政府系機関等の発行体格付、長期個別債務格付を格下げ方向のレーティング・モニターに指定した。こちらのほうが多少なり影響する可能性がある。

 R&Iは日本ソブリンを格下げ方向でレーティング・モニターにした理由については、言うまでもなく、どう見ても欧米などに比べて財政再建の歩みが遅いためである。消費増税だけが財政再建への道ではないかもしれないが、これまで先送りし続けた消費増税すらままならない状況というは危惧すべきことであろう。このために日本の格付け会社も警告を発してきたとも言える。

 ちなみに、R&Iは今年7月25日に米国債を格下げ方向でレーティング・モニターに指定していたが、米国債元利不払いの危険性が回避されたことを踏まえ、8月3日にレーティング・モニターを外し、外貨建、自国通貨建の発行体格付を最上位のAAAに据え置いている。


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by nihonkokusai | 2011-12-03 09:52 | 国債
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