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「既存の5年国債と個人向け固定利付5年国債の比較」

 新型個人向け国債(固定金利型)の金利についても財務省の発表があり、これで新型個人向け国債の概要がほぼ固まった。12月8日に実施される5年国債入札結果から導かれる基準金利から0.05%が差し引かれたものが、12月に募集される第一回新型個人向け国債(固定金利型)の利率になる。募集期間や発行日などは第13回個人向け国債(変動金利型)と同じ日となる。この新型個人向け国債(固定金利型)とすでに発行されている5年もの国債との相違点を見てみたい。

 「個人向け」は、発行から2年経過後に可能となり額面金額が保証される。これに対して「既存の5年国債」は売却はいつでも可能ながら、その際には額面は保障されていない。

 「個人向け」の中途解約時の買取価格は、額面金額と経過利子相当額を加えたものからすでに支払われた利子のうち最大4回分が差し引かれる。つまり利子4回分が解約時の手数料相当となる。「既存の5年国債」の途中売却は証券会社などが買い取るかたちとなるため、それぞれの金融機関で決めている手数料相当分が実勢価格から差引かれる。これは金融機関によって大きく異なるが、5年国債の場合は40銭あたりから60銭ぐらいのところが多いとも見られる。

 そして「個人向け」は年4回募集されるがその期間であれば個人が購入することはかなり容易なものとなる。これに対して「既存の5年国債」の発行は毎月行われているものの、既存の5年国債はあくまで法人向けを主眼としたものであり、証券会社なども煩雑さを避けるためにもそれを個人に向けて販売することは手控えている。郵便局では窓販分として一定数量販売販売されているが販売額はさほど大きくはない。

 償還まで持てば両方とも顔面金額が戻ってくる。しかし途中解約する際にはこの両者は大きな違いがある。「個人向け」は2年間のクローズ期間があるが、それを過ぎれば手数料相当分を差引かれるもの額面は保障される。これに対して「既存の5年国債」は実勢価格から金融機関が独自に決めた手数料を差引かれたものと、前回の利払い日からの日数に応じた利子が手取りの金額となる。

 利率の違いの0.05%の根拠は何かという疑問もあろう。2年経過後は額面が保障されるため、仮にこのような形式の仕組み債を別途作るとなればプットオプションなどのデリバティブ商品を絡める必要こととなり、そのための費用分ともとれる。どうしても額面は保持したいとなればその分の費用として見なす必要があり、0.05%という数値はむしろ有利な条件ではないかとの見方もある。

 金利は上がることもあれば下がることもある。つまり、既存の5年国債は額面割れの危険性がある反面、金利低下時には額面以上の価格ともなりうることも念のため注意したい。昨日の5年債の引けの価格を見てみると、例えば38回債(利率0.9%)など101円05銭となっており、40-60銭の手数料が取られたとしても、額面以上の金額になりうる。ただし、たとえば既存の5年国債で残存1年以上のものをみた場合、昨日の単価で100円50銭を上回っているものは、35本のうちの8本にしか過ぎない。もちろん金利の情勢にもかなり左右されるが、40-60銭といった手数料を考慮すれば額面を割込む可能性が高いことも確かである。

 この新型個人向け国債(固定金利型)は極めて定期預金や定額貯金に近いものとも言える。その比較からみれば、利子はかなり有利なものとなる。現時点での5年国債の利回りは0.8%(10月27日時点)近くあり0.05%を差引いても0.75%となるが、たとえば3年以上の定額貯金は、 0.06%(10月27日時点)と一桁違っている。日銀の量的緩和解除観測などにより中期ゾーンはある程度利回りも付いてきていることから、大きな情勢変化さえなければ、新型個人向け国債(固定金利型)についても、変動タイプに比べてわかりやすさ、また買いやすさ、利子の高さなどが評価され人気化してくる可能性が高いと思われる。
by nihonkokusai | 2005-10-27 15:01 | 国債
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