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フィッシャー、コチャラコタ、プロッサー各総裁の反対理由

 30日にミネアポリス地区連銀のコチャラコタ総裁は講演の中で、8月9日のFOMCにおいてFRBが2013年半ばまで超低金利を維持する可能性が高いと表明したことに反対票を投じたことについて、「今後の会合で再検討を求めるつもりはない。一度決めたことを覆すのは今後の決定の信頼性を損なう」と述べた。

 8月9日のFOMCにおいて、フィッシャー、コチャラコタ、プロッサーの3人の地区連銀総裁が「at least through mid-2013」ではなくて、「for an extended period」のままで良いのではないかとして反対した。ただし、一度決められたことについては、あらためて反対はしないとの方針は委員会制度のあり方として適切であると思う。

 ただし、コチャラコタ総裁は講演後の会見で、「追加緩和の方策は他にも幅広く用意してあるが、これ以上の追加緩和は今は支持しない」との見解を示した(ダウ・ジョーンズ通信)。つまり、次回9月20日、21日の会合では、物価の急落や失業率の著しい上昇がなければ、追加緩和策が提案されてもそれに反対する姿勢を示した。

 8月9日のFOMC議事要旨を見ると、このとき反対したフィッシャー、コチャラコタ、プロッサーの3人の反対理由は微妙に異なっていたことがわかる。

 フィッシャー氏は米国経済の脆弱性は、財政や規制に対する不透明さなど、金融以外の要因にあり、それが国内の投資や雇用創出、さらに経済成長を阻害していると述べている。さらに、委員会は低金利が維持されると予測する期間、つまりこれは2013年半ばまでということになろうが、の十分な情報を持っておらず、委員会のこの決定が金融市場のボラティリティに対して過剰なリアクションを起こさせるリスクがあるとした。

 8月26日のバーナンキ議長が財政問題に踏み込むコメントを多くしたことでも明らかなように、金融政策に限界があり、何から何まで中央銀行の金融政策に押し付けられてしまうと、その副作用にも注意する必要が出てくる。このあたりは日銀にとっても同様であろうが、日銀総裁が財政に踏み込む発言をすると、管轄外のことにまで首を突っ込むなという意見が返ってくる。金融政策と財政政策は相互に依存する関係でもあり、中央銀行が財政政策についてコメントをすることはある意味当然なことであると思うのだが。

 そして、コチャラコタ氏の反対理由としては、2010年11月以降、インフレ率は上昇し、失業率は低下しており、経済情勢からみて追加緩和の必要性はないとしている。ただし、30日の講演にもあったように、物価の急落や失業率の著しい上昇があれば、追加緩和の可能性はありうるとしているようである。その意味では、2日に発表される雇用統計の数値を確認する必要がある。

 プロッサー氏は、今回の2013年半ばまでというガイダンスの変更について、金融政策がどのような経済見通しの進展にも左右されず変更されないとの誤解を与えるだろうと警戒している。また、景気や雇用についての指標が予測よりも悪化するなどした際には、金融政策そのものが拙速となってしまうことや、さらなる金融緩和に対するシグナルを送ってしまうことについても警戒している。そして、米国経済は現在、構造的な調整や大きな苦難に直面していることから、ここからの金融緩和は将来の経済成長の見通しを改善させる効果に乏しい点も指摘している。

 3氏の反対理由を見る限り、米国経済の回復の鈍さについては金融緩和の踏み込みの弱さとかに原因があるのではなく、あくまで構造的な問題であり、金融政策による効果は限定的で、むしろ市場に期待感を創出させてしまうことで、余計にボラタイルな動きを招くリスクを警戒しているようである。

 9月20、21日のFOMCでは追加緩和が検討されるとみられているが、景気や雇用に対してよほど悪い数値が出ない限り、この3氏は次回もあらたな追加緩和に対しては反対に回る可能性がある。全員一致が望ましいものであるのかもしれないが、委員会制度をとっている以上は反対意見もたいへん貴重なものとなる。

 これに対して日銀の金融政策決定会合はここにきて全員一致が続いており、各委員の特色みたいなものはますます見えてこない。会合で反対すべきと言うわけではないが、もう少し個別の委員の意見を明らかにさせてきても良いように思う。



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by nihonkokusai | 2011-09-02 08:36 | 日銀
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