ECBによるイタリア、スペイン国債買入れ開始の背景
欧州の債務問題はギリシャ、ポルトガルなどから、スペインそしてイタリアへと広がっている。5日にスペインとイタリアの10年国債の利回りは6%台に乗せており、危機的水準とも言われる7%に接近しつつあった。
イタリアはユーロ圏での経済規模は3番目に大きく、もし仮にイタリアへの信用問題が深刻化すると欧州の債務問題は深刻の度を深める危険性がある。さらに市場ではベルギーやフランスにも及ぶのではないかとの懸念すら出てきていた。
9日の日経新聞によると、8日にECBは朝方からイタリアとスペインの国債の購入を開始し、購入額は合計で10億ユーロ以上に上るという。その後も断続的な買いが続き、購入額は20~30億ユーロとの見方もある。このECBの買入れを受けて、イタリアとスペインの10年債利回りは、5.3%台に低下した。イタリアの国債利回りは、EUがギリシャの第二次支援を決定した7月21日の水準まで戻された格好となったのである。
ECBはすでにギリシャ国債など購入した結果、740億ユーロもの国債を保有しているが、ユーロ圏の中央銀行の資本金・資本準備金の810億円に迫りつつあり、これ以上の購入は資本を毀損しかないと買入れを休止していた。
しかし、それにも関わらずECBが、休止していた債券購入プログラムを再開し、しかもギリシャ、ポルトガルではなくイタリアとスペインの国債を何故、購入しなければならなかったのであろうか。現状、イタリアとスペインの支払い能力に問題があるわけではない。
その答えのひとつは、欧州の信用不安の連鎖をここで断ち切らなければ、スペインからイタリアもさらにベルギー、フランスまで及びかねないとの警戒心によるものであろう。 ただし、米国債格下げ騒動に紛れてしまった感があるが、5日の米国市場では予想より改善を示した米雇用統計よりも、イタリアのベルルスコーニ首相の発言が米株高・債券安の要因ともなっていた。ベルルスコーニ首相は、緊縮財政策を前倒しで実施し、計画より1年早い2013年の財政均衡を目指す方針を示唆していた。しかし、それを議会は許さないとの見方もあるなど、欧州各国の政府サイドの問題が影響している可能性がある。
つまり各国政府そのものの基盤が盤石ではない上、欧州連合内部でも意見調整が難しい状況下、すばやく行動できるのはECBしかなかったという面もあろう。
イタリアとスペインの国債にまで踏み込んでしまったECBは、再び債務への懸念が強まれば、国債の買入れを継続しなければならなくなる状況に追い込まれる。ECBの国債買入はあくまで危機対応ではあるが、いずれ中央銀行の信任そのものが揺らぐ懸念も出てくる可能性がある。
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