2001年3月19日の日銀金融政策決定会合議事録より(続き)
植田委員は、「暫く経ってみると大して景気も良くならないし、場合によっては物価も下がり続けている。そしてさらなる緩和要求が来て・・・長国買いオペ増額と思う。それで期待インフレ率が上がって金利が上がってくれたり、景気が良くなってくれば良いが、ならないと地獄になる」と発言している。量的緩和後の状況を見るとその通りになったが、一点異なる点は、地獄とまではならなかった点ではなかろうか。
そのあと武富委員からも「地獄だ」とのコメントがあった。確かにその後も幾度かの追加緩和に追い込まれていたが、日銀にとって地獄の様相とまではならなかったのではないかと思う。特に福井日銀となってからは国債の買いオペ増額を封印しており、まさにアナウンスメント効果を重視した政策となっていた。
植田委員からは、「5兆円を6兆円、7兆円に変えても現状期待インフレ率に響く合理的な理由はあまり考え難いと思う」との発言もあり、また、山口副総裁からは「やってみないとわからない領域がわずかに残っている」との発言もあった。
この日の会合は9時01分にスタートし、終了したのは夕方の5時27分とかなり長時間にわたって議論が続けられていたことがわかる。公表文のかなり細かいところまで議論されていたこともわかる。このあたり細心の注意も払われていたのであろう。
ただ、意外だったのは量的緩和の導入に反対していた速水総裁がこの会合で自ら量的緩和策導入を積極的に推し進めていた点である。かなり開き直っていたのであろうか。速水総裁に比べて、むしろ山口副総裁がかなり慎重な立場をとっていたように思われる。また、植田委員はその後の日銀の量的緩和の姿をある程度、イメージしていたように思われる。
現在、日銀は量的緩和ではなく包括緩和政策を行なっている。量的緩和政策では実質的な効果はあまりなかったとも見られていたことで、包括緩和ではリスク資産の購入等も行なっている。しかし、10年前に植田委員の指摘していたように、今回で言えば基金規模を増額してそれがどのように期待インフレ率に働きかけるのかは、その効果のほどは、はっきりしていない。しかし、実質的なゼロ金利政策を採用し時間軸政策も同時に行なっている以上、基金の規模の増額による市場に対するアナウンスメント効果に期待するほかないことも確かか。
これにより日銀は金融緩和に対して踏み込みが足りない。これではデフレ脱却など無理との意見も出ている。それであるならば、財政法で禁じられた財政ファイナンスを目的とした国債引き受けを行なえば、期待インフレ率が高まり、景気は回復するというのであろうか。確かに結果として、物価上昇や一時的な景気回復を招く可能性は高いと思う。しかし、それは開けてはいけないパンドラの箱を開けた結果であり、それがその後、何を引き起こすのかは過去の歴史を振り返れば、容易に想像できることでもある。
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