震災復興の財源問題と日銀による国債引き受け
この復興債の償還期限がひとつの焦点となり、25日に野田財務大臣や片山総務大臣、与謝野経済財政担当大臣ら関係閣僚が協議した結果、復興債の償還期限は「5年間を基本に、最長10年」とする方針を固めた。
その後の報道によると、復興債の発行額は10.5兆円規模となり、償還財源は臨時増税が10.3兆円程度、税外収入が0.2兆円程度となる。また、今年度の基礎年金の国庫負担分(約2.5兆円)を臨時増税で補てんする場合は復興債・臨時増税の規模に2.5兆円が加算されることになる。
民主党内では増税が伴う財源の議論は景気に悪影響を及ぼすとして、否定的な意見も強く調整が難航することも予想されている。
7月5日に民主党の馬淵澄夫前首相補佐官は通信社とのインタビューで、復興財源として発行する国債を日銀が引き受け、量的緩和策を導入すべきとの考えを示している。6月には、民主党の前原誠司前外相からもどういう形であれ国債の引き受けを行うようなことをもう少しやってもいいのではないかと、インタビューで語っていた。
国債を市中消化しようが、日銀引受にしようが、それはいずれ償還されるものであり、そのための財源が必要になるはずである。日銀が引き受ければ、増税などによる国民負担は避けられる、というものではない。馬淵発言も前原発言も日銀によって引き受けられた国債はそのままロールオーバーし続けさせるという前提で話をしているのであろうか。
日銀による国債引き受けについては、馬淵氏や前原氏のようにいまだにそれを主張する声も少なくない。このためか、日銀の白川総裁もあらためて7月26日の講演で、そのリスクについて解説しており、その部分を確認したい。
「欧州でも、ソブリン・リスク問題が顕在化している諸国に限らず、多くの国で財政バランスが悪化しています。米国でも、政府債務の上限到達時期をギリギリに控え、緊迫した状況が続いています。こうした状況の下、今後、何らかのきっかけで世界的に国債金利が上昇し始め、とくに財政運営が脆弱な国に、大きな影響が及ぶ可能性があることは意識しておく必要があります。財政に関連しては、震災後、国債の日銀引き受けや、復興財源捻出のための日銀による国債の買いオペといった提案が聞かれることがありますが、中央銀行が財政ファイナンスを目的として金融政策を運営していると見なされると、長期金利は上昇し、日本経済に悪影響を与えます。」
「震災後、様々なリスクが「想定外」であったのかどうかを巡って活発な議論が行われていますが、中央銀行による国債の引き受けや実質的な引き受けによって起こる問題は、「想定外」の話ではなく、今の時点で十分認識できるリスクです。」
7月26日の日本時間で10時から、オバマ米大統領がテレビで米国の債務上限の引き上げ問題について演説したが、8月2日の期限を控えて緊迫した状況は続いている。米国の債務問題はギリシャの債務問題などとは異なることで、これをきっかけにたとえば米国国債が急落するといったことは考えづらい。
しかし、ギリシャのように何かをきっかけに信用不安が生じる可能性はある。「とくに財政運営が脆弱な国」、これは当然、日本も含まれるが、そういった国にとり、その可能性は高いはずである。
中央銀行による国債の引き受けや実質的な引き受けによって何か起きるかは、かなり予想がつく。だからこそ市場ではそこまで踏み込むようなことはしないであろうとの安心感もあるが、その期待がもし裏切られるようなことになれば、大きなリスクを抱え込むことになりかねない。
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