復興国債の日銀買い切りの問題点
年金給付に足りない分は年金積立金を取り崩して賄うとみられていたが、それでは年金制度への不安が増すとの公明党の批判などを受け、今年度については復興債の発行で手当する可能性が出てきた。
先日のコラムでも指摘したが、震災による復旧、復興のための国費部分は15~20兆円規模が想定されているが、1次補正が4兆円、2次補正が2兆円規模であり、これを差し引いてもざっくりと10兆円から15兆円規模となることが予想される。そこに2.5兆円分がオンされる格好になるのであろうか。
この復興国債について、その償還財源を臨時増税で充てるとした政府の復興構想会議の提言案に対し、6党211人による超党派議員連盟の「増税によらない復興財源を求める会」はこの増税に反対した。その上で、当面の対応について「政府と日銀の間で政策協定(アコード)を締結し、必要な財源調達として政府が発行する震災国債を日銀が原則全額買い切りオペするよう求める」と提唱しているのである。
これは批判も強い日銀による国債引受とはしていないが、財政ファイナンスが目的であるため、たとえ買い切りオペであろうが、日銀の国債引受となんら変わりはないものである。日銀の国債引受による弊害については言うまでもないことながら、それを211人もの国会議員が賛同しているという事実に驚きである。
白川日銀総裁が「通貨、国債、中央銀行 ―信認の相互依存性―」と題する講演の中で述べているように、仮に中央銀行による国債買入れオペが財政ファイナンスや国債金利の安定を目的として行われていると受け止められるようになると、リスク・プレミアムが高まり、長期国債金利は上昇する。
震災の影響が残る中で増税反対なのは理解できなくもないが、それでなぜ日銀に国債を引き受けさせなければいけないのか、その理由がわからない。日本の市場にはまだ国債を消化する余地はあるはずである。もし将来の税収ですでに国債が賄いきれないというのであれば、来年度の新規国債の発行などできない状況にあるというのであろうか。
増税反対ならば、将来の税収増を見据えた政策を講じる必要がある。もしその手段が日銀による国債引受によるとするのならば、何のために国会議員は存在しているのであろうか。
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