「第二条件のCPIが安定的にプラスとは」
「足許の物価が何か月も続いてプラスであり、先行きもプラスであると言う時に、一回マイナスとなることを前提に議論することは、あまり生産的ではないと思われる。素直に理解すれば、足許がプラス、先行きの年度の見通しがプラスという限りにおいては、多少の波があっても概ねプラスで推移することが当然想定されているのであって、時々大きく沈むことを想定して、予測を立てるということは多分ないのではないか。」
安定的にゼロ以上という表現をどのような解釈するのか。5年後、10年後の経済情勢など予測は困難であるため、再びCPIがマイナスとなる可能性はないとは言い切れない。たとえ先行き1年、2年後でも一時的にマイナスとなる可能性は当然あるため、一時的にせよマイナスとなることがないとするのはあまりに縛りがきついものと思われた。
それに対して、福井総裁は「足許がプラス、先行きの年度の見通しがプラスという」ことをもって第二条件を満たすことを示唆しているものとみられる。実際に2003年10月10日の「金融政策の透明性の強化について」においては下記のようなコメントとなっている。
「第2に、消費者物価指数の前年比上昇率が、先行き再びマイナスとなると見込まれないことが必要である。この点は、展望レポートにおける記述や政策委員の見通し等により、明らかにしていくこととする。具体的には、政策委員の多くが、見通し期間において、消費者物価指数の前年比上昇率がゼロ%を超える見通しを有していることが必要である」
そして今年4月に、日銀は公表する「経済・物価情勢の展望」が対象とする期間について、今後、当該年度に加え、翌年度を含めることにしており、そうなれば翌年度を含めた対象期間において、政策委員の多くがプラスとの見通しとなれば条件が満たされるものと思われる。
今月31日に発表が予定されている「展望リポート」では、すでに新聞などが報じていたように、「2005年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く)について前年度比0.1%下落としていた4月の予測を上方修正し、ゼロ%か0.1%の上昇にする見通し。2006年度の見通しについても0.3%の上昇から、0.1か0.2ポイント程度引き上げる方向で検討する」としている。
もし、この報道どおりの内容となれば、今月末時点において第二条件がクリアされることにもなる。もちろん肝心の第一条件、「直近公表の消費者物価指数の前年比上昇率が、単月でゼロ%以上となるだけでなく、基調的な動きとしてゼロ%以上であると判断する」ことが達成されてはいないが。