商品価格の高騰の原因とその影響
今回の国際商品市況上昇の原因としては、新興国や資源国の需要の拡大があげられる。これは2007年8月にニューヨーク原油先物価格が147ドルの高値をつけた際と同様の要因によるものである。投機的な資金が流れ込んだことも要因ではあったものの、その背景には中国など新興国による強い需要があった。この際の商品市況の急騰は、リーマン・ショックなどによる世界的な金融経済危機により、いったんは収束に向かう。
しかし、新興国の需要は衰えることはなく、2009年あたりから再び食料品価格や原油価格が上昇基調となった。それを加速させた要因として、米国を初めとする先進国の金融緩和に伴う投資資金が国際商品市場に流入していることも指摘された。
さらにここにきて供給ショックによる原油価格の上昇という側面も出てきた。新興国などでは食料品価格の高騰などにより国民の不満が高まり、また雇用の悪化などから政権そのものへの不満が強まった。それが中東における民主化運動を引き起こし、チュニジアのジャスミン革命の動きがエジプト、リビアにも飛び火した。特に原油産出国であるリビアからの原油供給がストップするなど、中東情勢緊迫化により原油価格をさらに上昇させてきている。
この国際商品市況の上昇が、先進国そして新興国・資源国の経済に対してどういうインパクトを与えるのかを探ることも重要であり、スタディグループの研究発表などにも注目したい。日本にとり新興国・資源国の需要の拡大による輸出増から景気に対してプラスの側面はあるものの、その価格の高騰そのものは景気に対してはマイナスに作用する。これは日本ばかりではなく、欧米諸国でも同様であろう。
それとともに今回の商品価格の高騰が世界の政治情勢を一変させるほどの影響力を持っていることにも注意する必要がある。
革命は伝播すると言われる。それは過去の歴史も示している。エジプトやリビアの長期政権がこのような短期間に崩れ去ることを誰が予見できたであろうか。しかも、これはまだ現在進行中であり、この革命の伝播がどこまで拡がるかとの懸念とともに、民主化後の政権の姿そのものもはっきりした形をとっておらず、先進国もその行方を見守るばかりである。
民主化の流れが、たとえばサウジアラビアや中国に伝播する可能性もないとは言えない。もしそうなれば、原油価格のさらなる急騰を招きかねず、また現在の世界の景気を支えている新興国の景気そのものが落ち込むような危険性もある。リーマン・ショック、ギリシャ・ショック、そして今度はジャスミン・ショックが世界経済を揺るがす可能性がある。
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