今後の消費者物価を見る上での注意点
日本の消費者物価は2007年10月あたりまで前年比でほぼゼロ近傍で推移していたものの、その後石油価格の上昇などを受けて2008年7月にプラス2.4%に上昇したが、ここがピークとなった。2008年9月のリーマン・ショックによる景気悪化などの影響により、2009年8月まで急激に落ち込んだのである。しかし、その後は世界的な需要刺激策などにより景気が回復してきたことで、日本のコアCPIもゼロ%近くまで戻ってきている。
先行きについては、景気の回復期待も再び強まっていることに加え、原油などの国際商品市況が上昇基調にあることから、2012年度にかけては徐々にプラス幅を拡大させていく見込みとなっている(2月23日の山口日銀副総裁の講演要旨より)。
ただし、注意しなければならないのは今年7月(発表は8月)の2005年から2010 年への基準年の変更である。一般に消費者物価指数の前年比は、基準年から先に進むほど実勢よりも強めに算出されやすく、こうした統計上の歪みは、基準改定の際に修正される傾向がある。つまり、来年の基準改定で消費者物価指数の前年比が下方に改定される可能性が高い。(昨年10月20日の西村日銀副総裁の講演より一部引用)。ちなみに前回の基準年の変更に際しては0.5%の下方修正が行われており、同様規模引下げられる可能性がある。
問題は今年の夏場にかけてどの程度物価が上昇してくるかである。ここにきてはリビアの政情不安により原油価格の上昇ピッチがさらに強まる懸念も出てきている。2008年7月に向けてと同様の動きを示す可能性もないとは言い切れない。ただし、原油価格など国際商品市況の上昇を背景とした物価上昇圧力となれば、景気には足枷となる。
いずれにしても、現在の水準であれば日本の消費者物価指数が債券相場などに影響を及ぼす可能性は少ない。しかし、基準年が変更される7月に向けてどの程度、コアCPIが上昇してくるのか注意しなければならない。また、その前に4月から高校授業料無償化の影響がなくなることで、現在のCPIの水準のままでも前年比プラスとなることが予想される。国際商品市況の上昇の影響とともに、4月と7月の数値が大きく変化することにも注意しておく必要がある。
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