「追加緩和での国庫短期証券(短期国債)買入増額の可能性」
ちなみに2009年2月からは政府短期証券(FB)及び割引短期国庫債券(TB)は、国庫短期証券(Treasury Discount Bills)として統合発行されることとなったが、それ以前に日銀ではすでに割引短期国債および政府短期証券を合わせて短期国債と称している。
ここで少し国庫短期証券(短期国債)の歴史について振り返ってみることしたい。
短期国債のうちFBが最初に発行されたのが1886年7月で、当初は利付債であったものが1902年3月に割引形式となった。当初は日銀がほぼ全額を引き受けていた。1956年にFBの定率公募発行残額日銀引受方式に移行したものの、割引歩合が公定歩合を下回っていたことで、日銀がほぼ全額を引き受ける状態に変化はなかった。
しかし、1981年に日銀は新たな余剰資金の吸収手段としてFB売りオペを導入したことによって、次第に流動性が高まってきた。日銀による売却レートが実勢レートとなっていたことで、買い付ける金融機関が増え残高も増加した。
1970年代後半から国債の大量発行が続きました。当時は1972年に国債発行の中心となるものの年限が7年から10年に延長されており、1970年代後半の10年後には大量の国債償還・借換えに対応する必要が出てきた。
このためすでに中長期で発行されていた借換債に加え、1986年から借換債として6か月物の短期の国債が発行されました。これがTBである。1989年には3か月物が導入され、ほぼ毎月発行となった。さらに1999年に1年物が追加された。
1999年4月からFBの名称は政府短期証券とし、それぞれの根拠法により大蔵省証券、食糧証券及び外国為替資金証券に分かれていたものが統合されることになった。さらに政府短期証券の発行方式が定率公募残額日銀引受方式から、原則として公募入札方式に改められた。公募入札方式への移行に伴いTB・FBの償還差益に関しては発行時の源泉徴収は免除され、外国法人についても原則非課税とされたのである。
さらに2000年4月からFBは完全公募入札に移行し、この際に期間2か月程度のFBが発行されることになった。また財政融資資金法が2001年4月1日から施行されることに伴い、FB(政府短期証券)に財政融資資金証券が追加され、従来の財務省証券、食糧証券及び外国為替資金証券と統合して4つの証券が一体として発行することになった。
そして、注目のFBを使った日銀のオペについては、1955年からFBの売却というかたちで始まっている。1981年にはFBを短資会社の窓口経由で市中に売却するという形式のFBオペが実施された。
1990年に日銀はTBの発行量の増加などにより、これを対象として現先方式の買いオペを実施。ただし、これはTBの保有層が偏在していたことなどからあまり活用されなかった。
1999年4月に「短期国債の条件付売買基本要領」が実施された。これにより、売買対象がFB及びTBとなり、FBの公募入札方式の移行にあわせ、次第に短国現先売買オペが日銀の金融調節の中核となって行った。
1999年10月には現先方式ではなく買い切り、売り切りとなる短期国債の買入・売却オペが導入された(売戻条件または買戻条件を付さない売買であるためアウトライト・オペレーションと呼ばれる)の導入を決定した。この際に、実施の規模については、あらかじめ特定することなく、その時々の金融情勢に応じて随時、売買を行うこととしている。また、買い入れた短期国債は、原則として現金償還を受けること、市場に資金余剰が生じた場合には、アウトライトでの売却も行いうることとしたいとある。
これについては、日銀のサイトの「短期国債売買基本要領」でも確認できる。「売買日、売買金額、売買先、売買の対象とする短期国債の銘柄その他売買を行うために必要な具体的事項については、金融市場の情勢等を勘案して売買のつど決定するものとする。」とある。
また、短期国債の買入については、国債買入のように日銀券発行残高に縛られるといったルール(日銀内規)も存在しない。もし仮に今回の決定会合で、8月末で8兆円規模の買入残となっている短期国債の買入増額を具体的な数字で示すこととなれば自ら縛りをつけてしまうことにもなりかねず、むしろ金融市場の情勢等を勘案して売買ができづらくなるはずである
それでも政府による為替介入を意識して、次回の決定会合で短期国債のことに触れるならば、短期国債のアウトライトオペなどを積極的に活用し、潤沢な資金供給をはかるといった文面が追加される程度になるのではなかろうか。