「今度は無利子国債ですか」
小沢氏は「都道府県で高速道路を造らせる仕組みにしたらどうか。それを国が支援する」と述べたうえで、地方の負担分について「無利子国債で補填ほてんする考えだ」と語ったそうである。
無利子非課税国債構想は目新しいものではない。自民党政権下でも何度も検討された経緯があり、それを蒸し返してきたにすぎない。過去何度も政府で検討されながら、実現できなかったのは、それなりに理由があろう。
無利子非課税国債構想とは、利子が付かない代わりに相続税を免除する国債を発行することで、眠っている民間資金を国債として吸い上げ財源として有効活用する狙いがある。言わば個人向け専用国債の一種である。
そもそも、この国債に対して個人のニーズはどれだけあるのであろうか。相続税を気にしなければならないほどの金持ちに対しての優遇措置ともみなされ、政治家自身が購入したいが為に発行させるのではとの意見もあるかもしれない。しかし、それ以前にこの国債に対してのニーズは何千億、何兆円も発行できるほどはないと考える。
昔、割引債券をツボに入れて隠し持っていた政治家がいたが、金融債がある種の税金逃れに使われていたことは周知の通りである。もしも、無利子非課税国債を税金逃れで購入しようとなれば、相続と対象となるような資産が人目に晒されることとなり、そのようなリスクを、果たして「眠っている資金」を保管している、所謂お金持ちが犯すことも考えづらい。もちろん無利子非課税国債の発行形式を昔の割引金融債のようにするというのもひとつの手段かもしれないが、それが果たして許されとは思えない。
しっかり申告をして無利子国債の恩恵を受けようとする人もいようが、それで発行できる無利子国債の金額は数兆円単位になるとはとうてい思えない。さらに事務手続きはかなり煩雑になるというデメリットもある。
財政問題をどのように処理するのか、民主党代表選に正式出馬した小沢氏の発言に注目していたが、どうやらその内容はこれまで政治家の思いつきのようなかたちで、浮かんでは消えたものを再び引き出しているに過ぎないようである。