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「あまりに中途半端なタイミングでの追加緩和」

日銀は本日、臨時の金融政策決定会合を開催し追加緩和策を決定した。政策金利は変更せずに、新型オペの総供給額を、現行の20兆円から30兆円に増額し、新たに貸出期間6月の新型オペ10兆円を新設する。

今回の追加緩和は新型オペの拡充(量もしくは期間)と見られていことで、想定の範囲内となったが、結果としては期間と量ともに増額させ、緩和効果をアピールか。しかし、市場ではさらなる緩和策を期待していたのか、この結果発表後に日経平均は上げ幅を縮小させ、外為市場ではやや円が買われた。

日銀は今回の追加緩和の理由として声明文では、「米国経済を中心に、先行きを巡る不確実性がこれまで以上に高まっており、為替相場や株価は不安定な動きを続けている。こうしたもとで、日本銀行としては、わが国の経済・物価見通しの下振れリスクに、より注意していくことが必要と判断した。」としている。

今回の追加緩和策については、全員一致とはならず、須田委員が反対票を投じた。新型オペを通じた資金供給を大幅に拡大することについて反対と声明文はあり、今回の追加緩和そのものに反対票を投じたものとみられる。政策金利の据え置きについては全員一致となっている。

4月7日に新型オペの増額を決定した際には、須田委員および野田委員が反対していた。今回の新型オペの拡充策について、このとき反対していた野田委員は今回は賛成票を投じている。野田委員は4月とはやや考え方を異にしていたのであろうか。

日銀は今回も昨年12月1日の臨時の金融政策決定会合のときと同様に、政治的に追い込まれての追加策との印象が強い。白川総裁が訪米中で、この際にはバーナンキ議長やトリシェ総裁などとの貴重な対話の機会でもあったにも関わらず、予定を1日に早めて急遽帰国したことを踏まえても、民主党の代表選をも睨んでの円高・株安対策へのアピールら日銀も歩調をあわせざるを得なかったと考えざるを得ない。

今度の緩和策については効果がまったくないわけではない。短期金利の中でもやや長めの期間の金利を低下させてくるとみられる。ただし、この追加緩和策は市場もある程度織り込み済みであったことで、たとえばこれで債券の中期ゾーンがさらに買い進まれるということも考えづらい。

株式市場や外為市場では、やや思惑的な動きも出やすいことで一時的に失望感も出てこようが、為替介入の可能性もあり、また明日発表される追加の経済対策の内容も見極める必要があるため、株式市場での失望売りなどは限定的となろう。

債券市場では長期金利が一時の0.9%割れからすでに1.1%台にまで跳ね上がるなど、過去2度の長期金利1%割れ後の債券急落と同じような様相となっており、米債の動向次第では債券のミニバブルの崩壊の可能性が強まりつつあり、日銀による追加緩和よりも足元の国債の需給動向が意識されやすい。

今回の日銀の追加緩和で注目すべきは、また政治の力が働いて日銀が動かざるを得なくなったことであろう。あらためて政治や市場で追い込まれて動く日銀との印象を与えたことについては、日銀への信認という意味からはマイナス要因となると思われる。通常の決定会合まで動かないとしていたのならば、その信念は貫くべきではなかったのか。もしくは追加緩和に追い込まれるとみたら、即座に行動を起こすことも必要ではなかったのか。今回の追加緩和の決定はあまりにタイミングが中途半端であり、菅総理と日銀総裁の会談、政府の追加経済対策発表というタイミングでしか見ることができないものとなってしまったことが、たいへん残念である。
by nihonkokusai | 2010-08-30 13:55 | 日銀
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