「首相と日銀総裁の会談先送りの影響」
両者は23日にも会談する方向と伝えられたことで、金融市場ではこれに合わせて政府が日銀に円高に対応する追加的金融緩和を迫り、臨時の金融政策決定会合が開催されるのではないかとの噂が18日から20日にかけての東京市場で駆け巡った。
時事によると会談先送りの検討理由は「独立性を持つ日銀の金融政策に政府が介入するような印象を避けるため」だそうである。今回の政府・日銀のトップ会談は昨年12月2日のトップ会談を前にしての、臨時の決定会合の開催が連想された。このときは日銀総裁のデフレを巡る発言などからも、日銀が政府との対立が決定的となるのを回避するため、追加緩和を行ったと市場では認識されていた。
今回の会談先送り、実質的には電話会談で済ませての先送りの理由は何であったのであろうか。そもそも首相と日銀総裁の会談を仕掛けた人物がおり、これにより日銀に追加緩和を行う環境を整えようとしていた可能性がある。
しかし、民主党の代表選などが影響し、政府自身が追加の経済対策を巡っての意見が閣僚間で分かれるなどしており、また、円高の責任を一方的に日銀に押し付けるような民主党幹部からの発言もあるなどしており、日銀としても政府と連携して対応できる状況にはないのかもしれない。
海外市場ではドイツのウェーバー連銀総裁は「年末まで無制限の資金供給を維持すべき」と述べたことで、ユーロ売りが強まった。欧米での自国通貨安のための誘導策はあの手この手で行われている。通貨安競争の中にあり、日本の政府・日銀が連携も取れないと市場で見透かされると円高圧力がさらに強まる可能性がある。
欧米ではバーナンキFRB議長や今回のウェーバー総裁のように中銀関係者による発言により、為替市場が反応してくることも多い。ここにきて沈黙を保っている日銀首脳も何らかの手を使う必要があろう。追加の緩和策だけがその手段ではない。たとえば、量的緩和策への復帰もひとつの選択肢といった発言だけでも、それなりのインパクトは与えられると思うのだが。