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「2003年の1%割れ後の債券急落を振り返る」

昨日、アップさせていただいたコラム「長期金利が1%割れに」へのブログへのアクセス数が、3068人といきなり大きく急増した。これは長期金利の低下に対しての関心度の高さを示すとともに、過去にあった1%割れの際のその後の状況を知りたい方が多かったためと思う。そこで、今回はあらためて2003年の債券急落について、過去の債券の暴落時の様子とともに当時の状況をもう少し詳しく振り返ってみることにする。

国債の流動化があまり進んでいなかったころに、国債は一度大きな暴落を経験している。それが、「ロクイチ国債」と呼ばれた国債の暴落である。1978年は、当時とすれば低金利局面であり、4月には利率6.1%(通称、ロクイチ国債)の国債が発行された。それまで発行された10年国債の最低利率であったこともあり、金利上昇に伴う価格下落が懸念された。1979年4月以降は、本格的な金利上昇局面となり、国債価格は大きく下落した。5月には国債価格下落を防ぐために、国債整理基金による公開入札形式の国債買い入れが実施されたにもかかわらず、景気拡大や原油価格の上昇により、6月にはロクイチ国債の利回りは上昇し9%を超えてきた。1980年、日銀は2月、3月と立て続けに公定歩合を引き上げた。このため、長期金利も大きく上昇し、ロクイチ国債は暴落した。4月にロクイチ国債の国債の利回りが12%台にまで上昇し、金融機関がパニック状況に陥ったのである。その後、米国金利の急激な低下などによって市況は急回復したが、このロクイチ国債の暴落は大蔵省(現、財務省)の国債管理政策にも大きな影響を与えたとされている。

2003年の国債急落とロクイチ国債を比較できるものではないが、2003年のときも極端なまでに利率が引き下げられた国債が入札されたことが急落のきっかけになっている点は類似している。2003年6月17日に実施された20年国債の入札において、超長期国債としては初めて利率が1%を割り込み0.8%となった。

2002年9月20日を基点に国債の金利は下げ続けていった。日銀による時間軸効果によって、中短期債から利回りが低下し、最後には超長期ゾーンへの積極的な買いが入った。先行きの相場上昇期待が極端に強まった。10年の利回りは0.3%とか0.2%まで低下するとの見方も出ていた。ほぼ一方的な上昇相場であり、債券の値動きも小さくなっていたことで、リスク管理上大きな要因にもなるボラティリティも低下し続けていった。債券への投資環境としては文句ない状況が続いていたのである。

しかし、それが長く続くわけでもないことは、ある意味当然ともいえる。上がったものはいつかは下がる。当初、米国債が下げ始めた。米国株式市場の上昇に影響され、東京株式市場は出来高を伴なって上昇してきた。また、債券先物は限月が6月11日から9月限に変わってから様相が変わってきた。大手銀行が6月限を大量に現引きし、中期主体にポジション整理に動き始めたとも言われた。そんな最中に20年国債の入札が実施されたのである。

落札結果自体は決して悪くはなかった。しかし、買い手が大きく変化していた。これまだ大量に超長期を買っていた大手生命保険会社が買いを控えたことが明らかとなった。また、中期を売っていた銀行が超長期を買うとの期待もあったが、それもなかった。結局、落札した業者は先物でヘッジせざるを得なくなり、これが急落の要因ともなった。

7月3日に10年国債の入札が行われた。利率は前回の0.5%から0.9%へと大きく引き上げられたが、結果はかなり不調なものとなり、10年国債の利回りはついに一時1%台に乗せ1.125%にまで上昇したのである。さらに4日には10年251回債は一時1.400%まで利回りが上昇し6月11日につけた0.43%からは1%近い利回り上昇となったのである。この日、先物も137円76銭とストップ安近くまで急落した。ところが、大手の機関投資家が数千億円とも思われる買いを10年主体に入れてきたことで今度は相場は急反発した。先物は140円38銭まで上昇し、一日の値幅が2円62銭となり債券先物としては、1985年11月1日に次いで二番目の記録となったのである。
by nihonkokusai | 2010-08-05 09:10
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