菅新首相誕生による債券相場への影響
これだけの顔ぶれを見れば、新政権は財政再建に向けて取り組む姿勢を強めるであろうことが読み取れる。そもそも菅新首相は、 財務相として5月11日に来年度予算編成方針に関して、「新規国債発行を今年度の44兆3000億円を超えないよう全力を挙げて努力する必要がある」と表明している。これはギリシャの財政問題に端を発し欧州諸国の財政問題がクローズアップされ、金融市場が大きく動揺した結果でもある。
2月5日の主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議で菅財務相は、日本の国債発行残高の多さを金メダルの水準と紹介し、2010年度予算成立後、直ちに財政再建に取り組む方針を示すなどしていた。欧州の財政問題が日本に飛び火してくる可能性はいまのところはないとは言え、日本の債務残高を考えれば、いずれ身動きできなくなる可能性も意識した発言であったと見られる。
新首相自身が財政規律を重んじる姿勢を示し、首相の補佐役となる新官房長官の仙石氏も、2月11日の記者会見で「日本の国内総生産はギリシャと比べものにならないぐらい大きい。もしものことがあったときに他国とか国際通貨基金(IMF)の手助けは期待できない大きさということも認識しておかなくてはならない」とも指摘するなど、以前より財政規律を重んじる姿勢を示している。
野田新財務相も、以前に「財政規律は死守しなければならない」との発言もあり、菅直人新政権は財政規律重視の姿勢を強めてくるとみられる。菅氏は財務相就任以前は消費税増税を封印していたが、その後は増税しても景気は良くなるとの発言もあり、むしろ財政再建に向けて消費税引き上げも今後は視野に入る可能性がある。
菅新政権は、財政規律に軸足を置くことが想定されることで、これ今後の国債需給の懸念をやや緩和させてくると思われる。債券相場にとってこれは大きな支援材料となりうる。ただし、参院選を控え本格的な財政債券に向けての施策が取れるかどうかは未知数であり、今後の動向を見守る必要はある。
さらに、菅氏からはこれまでデフレを強く意識した発言も目立つため、日銀に対する政府の影響力がさらに強まることも予想され、これはむしろ警戒する必要がある。ただし、債券相場にとっては超低金利政策が長く継続される可能性が強まるだけに、これも支援要因ではあるのだが。